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第28話 感冒

幸せな夜の後は 大体幸せな朝の筈だが どうにも そう上手くはいかないらしい 「創…大丈夫か⁇」 「…ん」 朝 創の異様な熱さで目覚めた俺は、真っ赤な顔で 苦しそうにしている創の額に手を当てた 「…熱っ‼︎」 俺はベッドから飛び起きると タオルを水で絞り、細い髪の下に滑りこませた後 お粥を作りながら今日のスケジュールを思い浮かべて 頭を抱えた 夕方から大切な会議が入っていて どう頑張っても 早目の帰宅は望めない 「…参ったな」 熱にうなされる創を一人残して行くのはかなり気が引ける ベッドを覗き込むとまだ眠っていた為 先に身支度を整えた ネクタイを締める前に もう一度創の元へ歩み寄り、白い頬に触れると ゆっくりと黄色い睫毛が動いた 「創…大丈夫か⁇」 「…ん」 荒く呼吸を繰り返す様は とても大丈夫そうには見えない 少しでも楽になって欲しいと思っても、俺には頭を撫でる事しか出来なくて とても歯痒かった 「ごめんな… 知らない所に来て 人混みにも行って 疲れたよな…」 俺の言葉に 創は力無く首を横に振った その姿がとても健気で 本気で仕事を休みたくなる 「…はぁ」 俺は 自分自身に溜息を吐くと汗で頬に張り付いた髪を整えながら、赤く染まる白い肌を撫でた 「重ねてごめんなんだけど…今日も仕事なんだ… 体調悪いのに 一人にして 本当ごめん…」 「…だい…じょう…ぶ…」 創が 俺の手に自分の手を重ねて 微笑んだ瞬間、熱で目が潤んでいるという相乗効果も手伝ってか 俺の下半身に ダイレクトに響いた 「…お…お粥作ったんだけど 食べれそうか⁉︎」 妙に焦ってしまい 声が上ずってしまった 慌てて創から手を離すも 挙動不審な俺に 創は首を傾げている 「…あとで…たべる…」 「そ そっか‼︎ じゃあ ゼリーとお茶 ここ置いとくから 食べれそうな方食べるんだぞ⁉︎ あと薬‼︎ 一緒に置いとくな⁉︎」 「…うん」 さっきまで俺も横で寝てたのに何だか妙に意識してしまう いや さっきどころか この数日抱いて寝てたのに 何を今更… もう一度創に視線を戻すとニコッと笑いながら手を振ってくれた 「…いってらっしゃい」 「い 行って来ます…」 ダメだ なんかもう 可愛い過ぎる… 勿論最初から可愛いとは思っていたが 笑顔の破壊力が凄すぎる 「…俺 大丈夫かな」 理性を保てる自信が揺らぎつつも、俺は何とか 迎えの車へと向かったのだった

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