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新しい出会い

10分後ーー 市営住宅前の砂利道を颯爽と歩いてこっちに向かってくる人影が見えた。 薄暗い外灯の下を素通りし、似たような建物が建ち並び、迷路みたいに入り組んでいるのに、その人物は迷うことなくうちの前に辿り着いた。 「初めまして、橘と申します」 名前を名乗りながらすっと現れたスーツ姿の男性は、どちらかといえばやせ形で、背が高くスタイル抜群だった。 彫りが深く端正な顔立ちで、同じ男とは思えないくらい格好いい、大人の人だった。 「名前を伺っても宜しいですか?」 男性に聞かれ慌ててポケットの中を探った。 「ままね、おはなし、できないの」 ガタっと玄関のドアが少しだけ開いて、一太が顔だけ出した。 「そうですか、それは失礼しました」 さぞかし驚くだろうなと思ったけど、男性はそれほど驚いてはいないようだった。顔に出ないだけかも知れないけど。 「ご面倒をお掛けしました。卯月、狸寝入りしていないでさっさとうちに帰りますよ。全く貴方という人は」 狸寝入り? 今、確かそう・・・ 聞き間違いかと思ったけど、下を向くと、男性と目が合った。獰猛な眼差しで射ぬくように見詰め返され、背筋が一瞬で凍り付いた。

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