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第11話 (Ⅱ)

Ⅱ  寝て、食べて、また寝て。こんなにのんびり過ごしたのは、子供の時以来だと思いながら、リアムは食事を終えたスプーンを角盆の上に置く。  捕らえられてから三日。体はようやく回復し、全身の痛みもほとんど引いたが、体調が良くなれば自然と考える余裕も出てきて、現状やこれから先のことを思案して焦燥に駆られる。 (あいつは心配ないと言ってたが、本当にノアたちも無事なのか……?)  親友も同じ基地内の違う部屋にいるとは聞いているが、ここに来てから一度も会っていないし、実際に見て確かめるまでは落ち着かない。けれど、捕らえられた身ではそれも叶わない。 「はあ……」  席を立ち、靴を脱ぎ捨てて投げやりにベッドに座る。  ──今までたくさんの訓練をしてきた。その証でもある傷跡だらけの自分の手のひらをじっと見つめるが、三日前の戦いを思い出してその手が僅かに震える。  リアムはそれなりに戦えると自負していた。そう思えるくらいにこの六年間、魔法や武術の訓練は欠かさなかったし、魔力を上げる努力もしてきた。  だが、いざ戦いに出てみればそれは戦いとも言えない程、呆気なく捕まって終わってしまった。  いくら自国に裏切られたとは言え、それに対抗することもできず、敵の基地まで連れて行かれたのは、今までの生き様を全て否定されたような気分だった。 (体も治ったし、この分だと明日から仕事か? ……どんな?)  奴隷として連れて来られたからには、自国の民にはやらせないような事をさせられるのだろうと、ここに来るまでは思っていた。  だが、奴隷にしてはやたら優遇されている状況に困惑する。小さいけれど生活するのに最低限の家具がある部屋を与えられ、食事も毎日二食きちんと出てくる。  上膳据膳で、自由がないことを除けば、今の環境は養成所よりも過ごしやすいかもしれない。  それに、養成所でも監視は常にされていたから、今の生活もそれほど不自由ではなかった。 (やっぱり、魔法使いとしてではなく……Ωとして……?)  不安に駆られて胸元に手を寄せ、返してもらったペンダントを服の上からそっと握り締める。そうすれば、励まされたような気がして、冷えた指先が少しだけ温かさを取り戻す。  ペンダントの中に入っていた薬は抜き取られていたが、予想の範疇だったし、これが返ってきただけで十分だ。  そんな風に一通り思案したところで、カチャリとドアが開く音がした。  ノックもなしに扉が開くのには慣れないが、奴隷のプライバシーなんてそんなものだろう。給仕の人間が皿を下げに遠慮なく部屋に入って来た。  ──と思ったが、扉から現れたのは予想外の人物で体が強張る。

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