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第21話

秀臣(ひでおみ)さん…見ててください」 秀臣さんに優しく抱きしめられて安心した俺は覚悟を決めた。 秀臣さんを見つめながら、ゆっくりと着ている物を脱いでいく。 芸術のため、秀臣さんのため。 頭ではわかってるけど、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい/// 薄暗いお風呂で一緒に脱ぐなら割と平気なのに。 部屋は太陽の光が差し込んで明るいし、秀臣さんはオシャレな洋服を着たままだから余計に恥じらってしまう。 あとはパンツだけ…。 チラッと秀臣さんを見ると、真剣な眼差しで俺を見つめていた。 もう後には引けない。 脱ぐしかない…。 ええい、男は度胸だ! 深呼吸をした俺は勢いよくパンツを脱いだ。 俺の大胆な脱ぎっぷりを見た秀臣さんが驚いた顔をした後、急に口元を緩ませた。 笑いを堪えるような仕草。 せっかく脱いだのに笑うなんて酷い! 「酷い、どうして笑うんですか」 「いや、すまない。あんなに恥ずかしそうに脱いでいたのに、最後はあまりに思い切りがいいからつい…」 ツボに入ってしまったらしく、秀臣さんは体を震わせながら笑う。 …そんな風にも笑うんだ…。 秀臣さんの笑顔をほとんど見た事がなかったから新鮮だった。 嬉しくなって、俺も一緒になって笑った。 ひとしきり2人で笑い合って、少し打ち解けた気がする。 今まではお互い遠慮してしまっていた部分があったから…。 「何か不快な事があったらすぐに教えて欲しい」 秀臣さんはそう告げると、丁寧にオリジナルデザインの洋服を俺に着せていく。 BGMのピアノ曲やアロマの香りには合わなさそうな色が奇抜で、洋服としての機能のなさそうな斬新な感じ。 こ、これがプロの感性なのかな…。 俺にはよくわからなかった。 洋服を着せ終わると布地を俺の体に馴染ませるように、手の平でゆっくり撫でる。 触れているのは洋服かも知れないけど、その温もりは布越しに俺にも伝わってくる。 まるで体中を愛撫されてるみたいで、体の奥の方が少し熱くなる。 意識したら下半身が反応してしまいそう…。 布の感触を楽しんだ秀臣さんは丁寧にメイクをしてくれた。 海外のファッションショーモデルみたいな個性的なメイク。 鏡の中の俺は別人みたいだった。 「すごい、俺じゃないみたい…」 平凡な俺の顔が、目鼻立ちがクッキリした華やか顔になっていた。 変身魔法をかけられたみたいで胸がときめいて、嬉しくなる。 今なら何でもできてしまいそう。 秀臣さんは満足そうに俺の手を取ると、ベッドに導いた。 真ん中に座ると、秀臣さんも隣に座る。 「今から環生(たまき)が着ているこの洋服を刻もうと思う。環生は何があっても俺を見つめていて欲しい」 秀臣さんが発した衝撃的な言葉。 ええっ、せっかくの洋服を刻んじゃうの…? 「素敵な洋服なのにもったいない気がします…」 「そうかも知れない。でも、『永遠じゃない一瞬の美』こそが美しいんだよ」 秀臣さんは優雅に微笑みながら俺の頰を撫でた。 そ、そうなんだ…。 でも、秀臣さんがそう言うならそうなんだろう。 満開の桜も真っ赤な紅葉も、季節限定だからこそキレイだし。 きっとそういう事を言ってるんだと思う。 俺はそう自分を納得させた…。

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