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 *** 「和真、あーんして」  粥を乗せた(さじ)を差しだし唇を軽くつついてやると、怯えた表情を浮かべた和真は視線をキョロキョロと泳がせて……それから小さく唇を開き口腔内へと受け入れた。 「飲み込めるか?」  和真を挟んで反対側に座る薫が尋ねれば、泣きそうに顔を歪めた彼は、小さく首を上下させる。 「ゆっくりでいいよ」  笑みを浮かべて奈津が告げげると、必死といった様子で粥を飲み込んだ和真だが、「えらいぞ」と褒めた薫が背中をさすったその途端、まるで涙腺が壊れたみたいにポロポロと涙を流し始めた。  和真は今、上半身を起こした状態でベッドの上に座っている。薫が背中を支えていないとたぶん倒れてしまうだろうが、それは足腰が立たなくなるまで二人の相手をしたからだ。 「ほら、もう一口」  もう一度、粥を掬って口の近くへと運んだが、小さな嗚咽を漏らした和真は俯いたまま動かなくなる。 「和真」  促すように名前を呼べばカタカタと体が震えはじめ、「ごめんなさい」と呪文のように繰り返すから、奈津は小さくため息をついて薫を視線で促した。 「寝てろ」  言いたいことは伝わったようで、薫は和真をベッドへ横たえ奈津に続いて立ち上がる。 「行ってくるから」  細くなってしまった和真の体へと布団を被せて奈津が告げると、挨拶しようとしているのか? 起きあがろうとするけれど、「動くな」と一言命じれば動きを止めて嗚咽を漏らした。

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