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side 怜  私、吸血鬼の怜(さくちゃんが付けてくれた名前です)は、オカマバーで働く、さくちゃんと一緒に暮らす事になりました。  お互いの体調の変化に注意しながら、緊張感漂う生活を送る事になるかと思っていたのですが、意外にもさくちゃんとの生活は、新鮮かつ余計な事を考えさせないという意味で良いスタートとなりました。  まぁ…違う意味での緊張はありましたが――。  さくちゃんは、最初に言われていた通り、私に家事を教えて下さいました。 ですが、私が失敗するたびに、言葉遣いの悪いさくちゃんは、私の事を『何も出来ない奴…』とバカにします。  プライドに傷がつきますが、実際私は、家事をやった事がありませんので、そのような言われ方をしても仕方がありません…。  以前までの私は、様々な所で出会い親しくなった女性に誘われるまま、その方の欲望を満たしてさしあげていました。  優しい言葉や甘い言葉を掛けたり、日々の話を聞いてさしあげたりしているうちに、女性達はそれだけで幸せな気持ちになるようです。 私が、「住むところが無いのです」と呟くと、一緒に暮らすように勧めてくれます。そして、彼女達は、私の為にいろいろと尽くしてくれました。  だから、私が家の事をするなんて事は無かったのです…。  私の出来ることと言えば、悩みを聞いてあげたり、女性を誉めてあげたり、甘い言葉を囁いたり…、それから、女性をベッドで美しく悶えさせてあげたり。そのくらいしかないのです。  そして、その愛の行為の間に、彼女達の血を頂かせてもらっていました。  女性との生活は、とても楽しいのですが、ある期間一緒に生活すると、相手に情が移りきらないうちに、その女性との生活を終わりにする事にしています。  ですが、ただ置き去りにするのではありません。女性を悲しませるのは苦手なので、必ず彼女達に次の出会いを用意してから、そこを去るようにしています。  吸血鬼は年を取りません…1人の女性と一生を共にするなんて事は考えられないのです。  考えてみると、男性と生活するのは、さくちゃんとが初めてではないでしょうか。女性達との生活と打って変わって、さくちゃんの為に家事をやらなくてはならない事になり、かなり戸惑いましたが――仕方ありません。

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