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第6話 情事のあと
昨夜の情事をぼんやりと思い出しながら、傍にあったペットボトルの水を重い躰を起こして、這って掴んで飲んだ。
蒼は気持ちよさそうに瞼を閉じて、長い睫毛が寝息とともに揺れていた。
対照的に蒼は気持ちよさそうに瞼を閉じて、長い睫毛が寝息とともに揺れていた。
時計を見るとまだ5時だ。
呆れながらも、蒼の寝顔が子供のように可愛くて、頬に優しくキスをした。
今日は一日ゆっくり過ごして、明日にはまたボストンに旅立ってしまう。
こうして過ごせるだけも、奇跡のようだ。
あの時はもう二度とこんな風に甘い夜を過ごして、朝を迎えられるとは思わなかった。
寝息が聞こえ、もう少し一緒に寝ようとまた毛布に潜りこんで傍で寝顔を眺めた。
目鼻立ちがしっかりとした彫りの深い端正な顔立ちはハーフの血のせいか俳優のようにも見えた。そして艶めかしく滑る分厚い胸板が男らしさを演出していた。
……何度も思うが、完璧すぎて、夢を見ているような気分になる。
昨夜のように何度もこの完璧な男に愛されているにもかかわらず、実感が中々沸かず、ふと不安になる時がある。前のように冷たいわけでもないが、蒼の情熱的な愛し方にも躰も心もたまについていかいない時があった。
三年付き合ったが、その後振られ、躰だけを繋いでやっとこうして戻れたが、最近離れた距離の分だけ、冷たかった蒼の記憶が蘇りそうになるせいなのは分かっていた。
何度も執拗に攻められ、潤んだ薄緑色の瞳でキスを強請られて意識が飛ぶまで蒼に抱かれ続けながら、また捨てられるんじゃないかと片隅で思うと勝手に切なくなった。
しかしながら、もう少し手加減して欲しいと思いつつ、求められて安心している自分がいる。
そして、昨夜の黒瀬の顔を思い出すと急に倦怠感を感じ、溜息がでた。
嫌な記憶だけが、まだ片隅にこびりついている。
エアコンが効いた室内で、はみ出た肌が震えた。
「……ん、皐月……いる?」
薄っすらと薄緑色の瞳が開いて、自分を捉えると蒼は安堵して腕で躰を引き寄せると瞼を閉た。温かなぬくもりと蒼の体臭を感じるとくすぐったくなった。
明日にはまた会えなくなると切なさが増し、今はまだこの幸せの中に包まれたかった。
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