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第49話 悪戯の代償 其の六★

「ここを責められるの、本当好きだなかさい。こんなにきつく摘まんでいるのに感じるのか? こうやって締め上げる度に、俺から精を絞り取ろうと、吸い付きながら絡み付いてくる」  竜紅人(りゅこうと)が言葉による陵辱を交えた快楽の鞭を、容赦なく耳元に甘く打ち付けた。 「ほらまた……咥え込んだ俺を根元から食い千切ろうとばかりに、締め付けてくる」  片方の手が胸から離れ、香彩(かさい)の白い臀部の肉を押し開く。顕になった結合部分は、実に卑猥だった。  香彩の淡い色の後孔は今は赤みを帯びて、凶悪な程の大きさの男の陰茎を食んでいる。竜紅人が雄をゆっくり引けば、僅かに見えた紅く咲いた華が優しく陰茎に纏わり付く。抜かれる度に捲れ上がる襞は、鮮血を思わせるほど赤く、硬い雄を補食しているかのようだ。 「何とも旨そうに、しゃぶってくれる」 「はんっぁ…ふぁあっ!ん……りゅ……う」  それは身体と心を隅々までを優しく愛撫しながら、まるで性的快感で隷属させるように、徹底的に自分好みに調教し、作り替えているようだった。  指、舌、匂い、視線、猛り勃った雄の熱さ、その形すらも忘れるなとばかりに身体に刻み付けられ、甘猥に熟れた身体を隅々まで寵愛されて、余すところなく徹底的にじっくりと味わい尽くされる。  覚えておけと。  何があっても決して忘れるなと言わんばかりの剛直に打ち付けられて、香彩は竜紅人の甘猥な陵辱ににも似た交わりに解放を懇願した。 「ふっ…う…いやぁ…もう、もうっ……あ…あ!」 「……もう……なに?」  竜紅人の指が再び胸の頂きを摘まむ。片方は強く引っ張り、もう片方は指で潰すように捏ねられて、高く艶かしい声が上がった。 「あ……やぁぁぁっ、んもう……()かせ……」 「ああ……そうだな」  唐突に胸を頂きを解放される。引き千切れそうなほど強く引っ張られ、潰さんばかりに揉みしだかれて、散々責め抜かれたそこは、痛い程に充血し、色付いていた。  じんとした熱い痛みのする胸先を物欲しそうに震わせながら、絶頂を求めて甘く切ない啼き声を上げる。  だが竜紅人は己の硬くて熱い雄を、後孔の中で焦らすようにゆっくりと擦り上げた。まるで香彩が焦れて動き出すのを誘うように、卑猥な腰使いで、柔く突き上げる。 「ん… あ…やん、んっ、ふああ…」  やがて竜紅人の律動に合わせて、香彩が悩ましく、くねらせる様に腰を振り始めた。  それに気を良くした竜紅人は、昂る射精感のままに、腰の動きを少しずつ早めていく。一気に突き刺し、奥で捏ねるように動かしながら、熱い吐息混じりの声を再び香彩の耳に吹き込んだ。 「忘れてくれるな、かさい……っ!俺の声、俺の体温」  ──俺の雄形(かたち)を忘れてくれるな……! 「あ、んっ…んっ!ああっ、はぁ……」   竜紅人は腰を更に激しく振って律動を早めた。動きに翻弄されて香彩は、竜紅人の独白にも似た語りかけに答える余裕など既に無い。  咥えた男の熱根の大きさを胎内(たいない)でこれでもかと感じて、深い悦楽に身体を震わせて歓喜する。突かれて擦り上げられる度に抑え切れない嬌声が、熱を孕む吐息と共に唇から溢れ落ちた。 「譬え俺が熱の感じられない、冷たい鱗の身体になっても……別の熱を受け入れることになっても、どうか忘れてくれるな……!!」 「んっ!はぁ……あ、んっ…ああっ」  絶頂へと誘う熱く白い波に浚われ、思考を呑まれかけ、甘い艶声を上げながらも、香彩は肩ごしに竜紅人を見る。  知ってしまったのだと思った。  蒼竜によって浚われる前に、聞いたこと。  (りょう)が与える、禁忌を犯した者への罰を。 「……りゅ……んっ、蒼竜でもっ、りゅこ……とは、りゅこ、と……だ、から……!」  そう言い終わるや否や、頤を掴まれて噛み付くような接吻(くちづけ)が降ってくる。 「……んっ、んんっ……!」  もう何も言うなとばかりに、竜紅人の熱くて長い舌が、歯列を(なぞ)り、やがて香彩の舌を絡め取った。  舌の付け根が痛い程に吸われながら、押し付けられた腰の勢いのままに、気付けば白壁に胸板が付く。  竜紅人が唇を解放する。  荒い吐息を香彩の唇に吹き掛けるようにして、彼は言うのだ。  ──蒼竜だからだ。 「……この熱を、どうか忘れてくれるな……!」  快感に浮かされながらも、香彩は竜紅人の伽羅色の瞳を見る。微かに滲ませる『妬み』と『焦り』を孕んだ欲の焔に、香彩は動揺する。  何故竜紅人が、こんな瞳をしているのか分からなかった。知りたいと思う気持ちは、竜紅人によって覆い隠される。  まるで見透かされたかのように、彼は聞くなとばかりに強く腰を突き入れる。  結腸の蕾を刺激していた竜紅人の雄は、見計らったように、ぐぼっ、と卑猥な音を立てて、輪をくぐり抜けた。 「やあぁぁぁっ!ああっ、はぁ……」  最奥まで埋め込まれた熱い雄に、香彩はだんだんと何も考えられなくなる。  白壁に付いた香彩の手の甲に、竜紅人の手が重なって、強く握られた。  それが合図だったかのように、もう充分に(ほぐ)れた後蕾と結腸の蕾を、更に掻き回して拡げて、雄の届く結腸の更に奥まで、執拗に擦り上げる。  待ち望んでいたとばかりに香彩の柔らかい媚肉は、根元から竿に絡み付き、熱い粘膜が亀頭の先端に吸い付く。  貪欲に蠢く胎内に耐え切れず、竜紅人は奥の奥へ熱い精の飛沫を流し込んだ。 「ひあぁぁっはぁ……ああっ!」  そのあまりの熱さに、香彩は悶えながら白濁とした凝りを吐き出す。  竜紅人の熱い奔流の全てを、最奥で受け止めると、香彩は恍惚とした表情を浮かべたまま、上半身を敷包布に沈ませたのだ。

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