13 / 36

ゴメン、嘘つきました 3(藤田)

 牧野って、どうして学校だと冷たいんだろう? もう少し普通に会話してくれたって良いじゃないか。……付き合う前も、牧野はすごく喋るってタイプではなかったから、あいつにしたら、前と変わってないと思っているだろうけど。  でもまぁ、牧野のことだから……俺たちの関係がバレるのが、嫌だからなのかも――。 だけど、柿本にバレてるってことは、そのうち他の奴にも絶対伝わると思うんだよな。  俺は別に、みんなにバレても平気だと思ってるし、少しでも長く一緒にいたいから、牧野が部活の日も、今のところ牧野を待って一緒に帰ることにしてる。でも、牧野はそれも嫌だったのかもな。 だから、「一緒に帰れない」って俺が言っても、全然気にしない感じだったのかな。  あーあ。ベッドの上では、あんなに可愛いのに。俺に甘えて、何度も「キスして……」なんて言ったりしてんのにさぁ。学校じゃ、まったく違うんだよ。  でも、まぁ、そのギャップも良いと言えば良いんだけど……。  教室を出て、廊下を歩きながら俺はそんなことを考えていた。 「おい、藤田。なに、ボケッとしてんだよ? そんなんなら、俺のこと誘わないで1人で帰れば良かっただろ」  隣で歩いていた柿本が、怒ったようにそう言いながら俺の頭を叩いた。そうだ、柿本の存在をすっかり忘れていた。 「イテーな……。俺、別にお前の事なんて誘ってないぜ?!」  ムッとしてそう答えると、柿本がもう一度俺を叩いた。何するんだよ?! この暴力男め……。 「あん? 何言ってんだよ、一緒に帰ろうって言ったのはテメーだろが」  あぁ、そうだ。そう言えば、そうだった……牧野に当てつけたつもりだったんだ。 でも、牧野は俺の事を見てなかったみたいだし、気づいたときには教室から居なくなってたんだ。 「いや、それは申し訳ない――」  俺が頭を下げて謝ったというのに、柿本は何も聞いてないようで、隣でブツブツ文句を言いつづけていた。  そして、靴を履き替え、校舎を出た俺と柿本は、体育館のそばを通り過ぎようとしていた。  体育館からは、キュッキュッとバッシュの鳴る音が聞こえていた。多分、牧野たちバスケ部員はランニングしている頃だろう。  チラッと体育館の方を見ると、俺のマキちゃんが走っている姿が体育館の窓から見えた。部員は何人もいるのに、マキちゃんをすぐに見つけられるのは……やっぱり、大好きな相手だからなんだろうな。 「かっこ良いよなぁー」  俺が牧野の姿を見ながら呟いたら、隣に居た柿本は何を勘違いしたのか、急に俺の肩に腕を回してきた。 「ん? 俺ってそんなにかっこ良い? 藤田君、マキちゃんから俺に乗り換える?」  とのたまった。 「はぁ?」  あまりにも見当はずれのことを言われ、俺は間の抜けたような声を出してしまった。  

ともだちにシェアしよう!