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「アーヴィング様っ?」 「今日は俺の方が先に終わったか、お疲れ様」 「お疲れ様です」 リハビリが終わる頃に合わせ、訓練を切り上げ迎えに来てくれる彼。 いつもは上から見下ろされるのに今は僕の方が見下ろしてて、なんだか照れくさい。 「後少しで終わるので下ろしていただいてよろしいでしうか」 「まだするのか? もう今日は終わりにしないか?」 「いやっ、もうちょっとなので」 「そうですね。ここまでにいたしましょうか」 「えぇっ」 パンッと手を叩きながら医師がこちらを見る。 「アーヴィング、今日はいつもより1回多く折り返せたのですよ。大きな変化です、褒めてあげてくださいね。 それから、部屋に戻ったらいつも通り入念なマッサージを」 「本当ですか!分かりました」 (そ、そんな褒めろなんて……!) 別に僕は僕のためにやってるのであって、早く歩きたいし迷惑かからないようにしたいし、だから褒められるようなことは全然してなくて、そのーー 「リシェ」 「っ、〜〜〜〜っ」 「はははっ」 優しく笑われ、ぶわりと体温が上がる。 赤くなった顔が恥ずかしくて両手で隠すと、アーヴィング様と医師の笑う声が聞こえて。 (一刻も早く、もう一刻も早く部屋に戻りたい……!) アーヴィング様を急かそうと口を開いた、途端。 「ロカ!大丈夫か!?」 「えっ?」 いきなり、陛下が何処からともなく座っているロカ様へ向け走って来られた。 「体調が悪いのか? 医師を呼ぶか?」 「ラ、ラーゲル様? 僕全然元気ですけど」 「嘘を言うな、座り込んでいるではないか」 「これはさっきリシェが座ったから、一緒に」 「言い訳は聞かぬ。キツイのだろう? 今運んでやるからな」 「ぇ、ちょ、話を聞いて!」 あれやこれや言う前に、ガバリとロカ様を腕に抱く。 「リシェに聞いたら分かるから!ねぇ!」 「もしそうであっても、お前はいつも無理をする。 今日はこのまま連れて帰るからな」 「それもう座ってたこと何も関係なくない!? ちょっとラーゲル様!? ラーゲル様!!」 (わ、ぁ……) 問答無用で連れ去っていく背中。 そっか、これが「過保護さが増した」か。 確かに大変だ。 でも、陛下がロカ様や世継ぎの子を大事に思う気持ちはわかるからなぁ。 (うぅん……なんとも言えないかも) とりあえず応援するしかない。 明日ロカ様の話を聞いてあげよう。ふふ、ちょっと微笑ましいけどなぁ。 「さて、俺たちも帰るかリシェ」 「はいっ。先生、本日もありがとうございました」 「いいえ。また明日」 高い位置からお辞儀しながら、ゆっくり歩くアーヴィング様に揺られて部屋まで戻った。

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