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【第一章 夜に秘める】「剣を忘れるな」(10)

「高慢であればあるほど美しいですよ、あなたは」 「言ってる意味が分からん」  フンと鼻を鳴らすアルフォンス。  どんなにへりくだったところで、お前の所業は絶対に許さないとカインを睨みすえる。  激しく輝く翡翠色の双眸。  カインは吐息を漏らした。 「アルフォンス殿下、お食事の用意を整えましたよ。朝食が一番の肝といいますからね。ゆっくりと召しあがってください」  王の言葉とともに、朝食と呼ぶにはいささか贅沢な皿が五つ六つと運ばれてくる。  ロイ将軍と呼ばれた髭面も給仕役をさせられていることを思えば、王の天幕に入れる人員はごく少数に限られているのかもしれない。  牛の肉の炙りにハーブソースを添えた皿。  温かく胃を満たすスープ。  アルフォンスにも馴染みがあるジャガイモは、しかし贅沢品のバターでソテーされている。  さすがにパンは糧食用であったが、それでも王の食卓として遜色のないものだ。  瑞々しい果物を盛った盆まである。  新鮮な水だけではなく、ワインも数種類用意されていた。  当然のようにアルフォンスの正面に座ったカインが食前の祈りもなく肉にフォークを突き立てる。  一口頬張ってから、金髪の王弟が先程からピクリとも動いていないことに眉根を寄せた。

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