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第5-4話

「どうしてこんなところに落ちてきたんだ?」  尋ねながら青に杯を進める。  香り高い酒の匂いは少し胸に含んだだけで思わず酔いが回るよう。ギューが喉を鳴らして飲んでいく様子を目にかけると、酷く美味いのだと思わせる。 「覚悟を決めたと思ったが、嫌だと思ってしまったんだ」  飲めと、尻目に睨まれて青は花びらの縁に触れた。徐に杯を傾けると、重く腹の底に落ちていく舌触りに、しまったと杯を離す。この酒は怪士の好みそうな代物である。四肢を鈍らせ、思考を奪う。脈は力強く打ち始め、青の身体は真冬に狂い咲く花のように熱く疼きだす。 「美味いだろう」 「……ああ、だが、かなり、強い」 「残すなよ。俺たちのお気に入りを残したら、ただじゃおかない」  ギューの声が遠くにぼやけて聞こえるよう。何を言ったのだと聞き返す青の膝にギューの足が触れる。近づく肌に、拒むほど絡みつくようで、力の抜けた青の身体は逆らえない。重くなでつける手を許してしまえば、ギューの手が青の髪をさらう。解けた毛先が肌を掠め、触れていく彼の指先に青は高まっていく。  青の胸の先の蕾みはもどかしい快楽のうずきを秘めていた。ギューのたてる音が少し触れただけで、青の身体は跳ねる。(せぐく)まる身体はそれ以上のものをと求めてしまう。押さえつけるように腕を抱えて頭を振る。 「む、むりだ。それ以上は飲めない」  飲んでしまえば不覚に陥る。そうなればギューの思うつぼ。股掌(こしょう)の上でもてあそばれるに違いない。  しかし拒む青に反して、ギューの唇は青の残した酒に潤い、青の顔を捕らえると無理矢理にでも流し込もうとする。その舌使いさえもが心地よく、青は受け入れてしまいそうになる。 「ギュー、やめろ……」  零れるしずくを、舌先が舐め取っていく。細い顎を伝い、胸の先の蕾が甘く吸われるとぞわりと下肢が痺れ、水茎は濡れていく。雪が積もったばかりのような柔らかな青のからだである。清瀬の手はまだすべてを撫で尽くしたわけではないのだ。  それだというのにギューは身体中を撫で、腿の肌を合わせ、脈はますます跳ね上がる。からだはつま先まで熱を放ち、抑えきれない気色に肌がそよいだ。  呼吸を重ねるギューの胸に抱かれて一つとはね除ける判断さえも奪われた青は、ぐったりと彼の腕にもたれかかった。そのままギューの掠める指先に悶えるばかり。まるで自分の体とは思えないほど身体が勝手に反応してしまう。唾液は喉に絡まり、飲み込む暇もないほどに荒く乱れていく。あらわになる水茎を強く握られれば、その刺激だけで迸りそうになる。潮先が押し寄せるような快感に呼吸は更に浅くなった。 「意識はあるか?」  ギューの問いかけに力なく頷きそうになりながら、青は必死にだめだと口にした。 「さわるな……」  感じた顔で、その蕩けた声色で、細い腰を弓なりに反らせ、艶めいた声も抑えられないくせに、何がだめなのだと、ギューは笑う。 「酒を残すなといったはず」  痛いほど、ギューは青の内股に噛みついた。その激しささえも奮ってしまう。 「艶事を、したいのか? 俺と。なぜ」  青は激しい苦痛に震え、目は涙に潤んで必死にギューに訴えかけていた。  溺れてしまえば苦しいことはない。本能は求めているのだ。それなのに目を背けて抗おうとするのだから、素直でない男だと、ギューは思う。 「催花だ。経験はあるんだろう。男の手で花を咲かせてもらったはず」

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