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第32話 カシワギ

ハルマからのメッセージで、しばらく勉強会を休むこと、登下校も別々にしたいと来た。 俺も、タツオミには勉強会を休む連絡をした。 もうすぐ夏休みだったから、また状況は変わるかもしれないけど、日常から急にハルマがいなくなってしまった。 もし、大学が遠くなったら、これが普通になってしまうんだろう。 ――――――――――――― 放課後、図書室に向かった。 リョウスケに甘え過ぎていた。 やっぱり、リョウスケのことは好きだけど、体から始まった関係だから、リョウスケに浮気心が出るのはしょうがないんだろう。 図書委員の仕事が溜まっていた。 毎月、おすすめの本の紹介文を書くのだが、今回は恋愛小説だった。 恋愛小説は苦手だ。 好きなのか、好きじゃないのか迷った挙句、ライバルが出たりと面倒臭い。 はっきりしろよ、と思う。 なのに、自分の恋愛はまさにそんな感じだ。 男同士の高いハードルを超えたはずなのに、落ち着かない。 そもそも、リョウスケにとってはやっぱり俺は友達で、体の関係だけになるのが、ちょうどいいんだろうか。 それはそれで、幸せかもしれない……。 そんなことを考えていたら、声をかけられた。 「ハルマ、珍しいね、こんな時間に図書室にいるなんて。」 図書委員長で三年のカシワギだった。 「紹介文がまだ書けていなくて……。恋愛小説が苦手なんで。」 「そうなんだ。ハルマはモテるから、経験豊富だと思ってた。」 カシワギは爽やかに笑った。 穏やかで優しいカシワギは、男子からは信頼され、女子から人気だった。 でも、俺は苦手だった。 一年の今頃、カシワギと図書整理をしていた。 他の人が予備校やら用事やらで早く帰り、暇だった俺は遅くまでカシワギを手伝った。 委員会に入ってから、カシワギは委員会のことだけでなく、学校のことを色々教えてくれたり、よく話を聞いてくれて、いい先輩に恵まれたと思っていた。 まもなく作業が終わりそうとなった時、カシワギから急に抱きしめられた。 「ごめん、一目惚れしたんだ。」 そう言われて、キスをされた。 俺は驚いてカシワギをつき飛ばして、「ごめんなさい!」と叫んで、急いでその場から離れて、帰った。 カシワギは、悲しそうな目をしていた。 それから、カシワギを避けていた。 カシワギが声をかけて来ることもなかった。 「面倒くさいんで、恋愛って。」 「……そうかもね。相手があることだから。」 カシワギは、今俺のことをどう思っているのだろう。 「あのさ、ハルマはボランティアに興味ある?」 「え?まあ、内容によりますけど。」 「移動図書館の本整理と、イベントでの子どもへの読み聞かせボランティア募集してて……。ぶっちゃけ、今僕しかいないんだ……。もし、日程合えば、来てくれないかな……?」 カシワギは困り顔で言った。 リョウスケとこんな感じになっていなければ、断っていた。 「……暇なんで、手伝えると思います。」 そう答えた。

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