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 大人しく撫でられながら、礼二郎は柴を見つめて言った。 「……昨日も思ったけど、柴君の手ってなんだか安心するな」 「え?」 「駅でナンパから助けてくれたときも、昨日涙をぬぐってくれたときも、今もさ。なんでだろう?」  撫でられているから──というより、側にいるだけで安心するのだ。理由は分からない。  昨日『守りたい』と率直に言われたからだろうか。しかしそれだけでは到底説明のつかない、絶対的な安心感だ。  白檀の香りのせいだろうか。怖いものが何も寄ってこないような、強力なお守りを抱いているような、そういう類の――…… 礼二郎は自然と目を閉じて、自分からも柴の手に頭を擦り付けた。 「俺、もしかして口説かれてる?」 「へっ?」  真顔で問われて、礼二郎はハッとした。 (お、俺は今、男相手に何を言って……ていうか何をした!?) 「ち、ち、違ッ! その、そういうんじゃなくてぇ!! あ、兄貴と間違え、いや兄貴にも最近はこんなことされないけどッッ」 「――槐君になら、口説かれても大歓迎だけど」 「え!?」 「俺、どっちでもイケる奴だから」 「ええ!?」  柴はニッコリ笑って言った。礼二郎は一応ノリで驚いたが、本心は。 (ど、どっちでもイケるってのは何なんだ……!? ていうかどこに!?)  あまりよく分かっていなかった。

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