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囚愛Ⅱ《雅side》2

自由寮に入って2週間経ったある日の放課後、エリックにお願いしてた荷物を持ってきてもらった。 というよりも、久しぶりに会いたかっただけ。 「お久しぶりです雅様」 「エリックー!久しぶり!ごめんね忙しいのに。部屋を案内するよ」 竜と同室で使っている部屋に招き入れる。 「30分だけ時間あるから。そしたらまた夜まで練習」 荷物を置いて、立っているエリックを抱きしめた。 30分で終わらせるのは不可能だよなと思いながら、久しぶりにエリックのやわらかい唇と舌を堪能する。 「ん…は―…ぁ…雅…様」 近くにあるベッドに押し倒そうとしたが、彼は珍しく抵抗した。 「んっ…嫌…ですっ!…こんな場所で!」 「そう?」 結構本気で嫌がるな―… そして唇を離して少し俺を睨み付けてエリックが言う。 「というか雅様…性の練習はもうする必要ありませんよね?もう本命を抱いているそうじゃありませんか」 「本命…?」 本命を抱いている…? そりゃそうだよね…本命はエリックだし。 最近は抱けてないけど。 「だからもう私と練習などしなくていいでしょう。その方を大事にしてあげてください」 「ん?」 状況が分からないな。 練習?その方? 「竜…ですよね?」 「ん?」 「竜はとても可愛らしいですし、お似合いです。私とのセックスの回数が減ったのも竜と打ち合わせをし始めた頃からですし…」 見つめていた顔をそらして、最後は独り言かのように小さな声で呟いて。 キスをしたい欲求を抑えて、このクイズに正解するために脳の神経を集中させて考えてみよう。 thinking time… そしてその答えのヒントをもらうことにした。 「あー、ごめんねエリック。ちょっと整理させて。俺の好きな人を竜だと思ってる?」 「…違うのですか?」 的中。 確かに今までは週に3回ほどエリックとセックスをしていた。 俺が竜と文化祭の打ち合わせを始めてからダンスの動画を見たり振り付けを考えたりして、それが週に1回…長くて10日に1回だったかも。 それを竜が本命で、自分とのセックスが減ったと勘違いしているという回答に行き着く。 「えっと…俺言ってなかったっけ?―……言ってないかも。俺はね、エリックの誕生日に白薔薇をプレゼントし始めた時からエリックを本気で愛してる」 「―…え?」 「だからセックスの練習なんかしたことない。ずっと本番だよ。最初に君を抱いたときから、ずっとね」 それにしても毎年エリックの誕生日にはちゃんと「愛してるよ」って言って白薔薇をあげてるのに。 俺の愛を軽く見てたな? 舐められたもんだ。 そして俺はエリックの頬を両手で触れて、目を合わせてウィンクして言った。 「高校卒業したら俺は君に最高のプロポーズをするからね。待ってて♪」 俺だけを見て。 逃がさないよ。 そう思って再びキスをすると、エリックは嫌がらずにいつものようにキスを続けた。 これはクイズに正解したご褒美かな、と唇を舐め、舌を絡ませエリックの服に手を入れた瞬間、俺のスマホのタイマーが鳴った。 ―…Time up 「あぁもう30分だ…皆が俺を待ってる。愛してるよエリック。文化祭終わったらたくさん抱くからね」 軽くキスをし、そして二人で部屋を後にしてエリックと別れた。 ダンス部の練習場に来ていた竜が笑顔で俺に話しかける。 「エリックに会えた?」 「竜…会えたけど早くエリックを抱きたくてたまらない。愛が止まらない。世の中のタイマーをぶっ壊したくなった」 「ははっ。土日は少し帰ったら?」 「ダンスの進捗次第だね。結構ギリギリだからなぁ。とりあえず頑張ろう!」 結局、ダンスをより良いものにしたくて数々のリハーサルを重ねて調整を繰り返し、家に帰らず、文化祭当日を迎えた。

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