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囚愛Ⅱ《ソフィアSS》

「《ソフィア》」 マスカットが好きな私の王子様が、ソファーに座っている私に近付いてきた。 「《もしも俺に何かあったら、エリックを頼みたい》」 私の隣に座り、1歳になり歩けるようになった雅とそんな雅と遊んでいるエリックとテリーを見つめて言った。 「《その時はエリックを雅の執事にしてほしい。雅が18になって学校を卒業するまでは契約を》」 雅彦はそう言って、雅彦のサインが書かれている自分が亡くなった場合の執事契約書を私に渡してきた。 ―執事契約書― 期限:フローレス・雅・三科が18になり高校を卒業するまで 「《もし契約が終わって、それでもエリックが雅の執事を勤めたいなら契約の延長は雅に委任をする。執事を継続しないなら、エリックを自由にしてあげて》」 雅彦は大好きなマスカットを口にしながら、遊んでいるエリックを指差して続ける。 「《彼は16からずっと俺の傍にいる。雅が18になったときは38歳だ。まだ色々やれる。ずっと俺たちに時間を費やしてきたんだ。やりたいことをしてほしい》」 そしてマスカットを食べ終え、私の肩に腕を回し、私を見つめて言う。 「《でももし雅を愛してしまったから執事を辞めるというのなら、引き留めないで欲しい。時間を少し置いて、考えさせて。そして1度だけ思いを確かめるチャンスをあげて》」 「《チャンス?》」 「《チャンスはソフィアに任せる。ソフィアが手助けして。雅に他の恋人がいるなら別だけど》」 雅彦のお皿の上にマスカットが無くなったことに気付いたエリックが、新しいマスカット1房を無言で補充する。 そして再び、雅とテリーと遊び始めた。 「《もし二人が恋をして離れるようなことがあれば、ソフィア…君が手助けを。まぁ、あり得ないだろうけどね。エリックが主を好きになるなんて》」 「《そうね、雅彦にさえ恋愛感情ないものね》」 私がマスカットに手を伸ばすと、雅彦は食べようとして口に運んでいたマスカットを口移しで私の口に入れた。 そしてそのマスカットを舌で転がしながら、私の舌も弄ぶ。 「《ん―…ふぁ…や―…》」  その行動に驚き、顔を赤くしていると、雅彦は口を離して私の顎を掴んでウィンクして言う。 「《この俺に惚れないとかある?なんて…エリックは真面目だからさ、頼んだよソフィア》」 このキスだけで、腰が砕けそうになる。 私は口移しされたマスカットを自分の左頬に押し込み、会話を続けた。 「《…あ、あなたに何も無かったら?》」 「《そしたらエリックは死ぬまで俺の執事だろうね。可哀想に》」 ふと優しい笑みを浮かべた彼は、その3年後射殺された。 彼は分かっていたのかもしれない。 自分が狙われていたこと。 そう遠くない未来、命を落とすかもしれないこと。 エリックがいなくなって2年、雅の気持ちはまだエリックにあった。 なら私は、1度だけのチャンスを。 「テリー、お願いがあるの―…」 「かしこまりました」 あなたたちが再び出会えるように。 出会ってからどうするかは二人次第。 どうか二人の恋が成就しますように。 【to be continued】

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