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第26話

いつも自信に満ち溢れる琥珀色の瞳が不安に揺れていて、時雨は驚いた。 さっきまでとは別人のような圭に動揺する。 「ちょっ……、触らないでっ!」 まだ敏感な身体に例え手でも触れて欲しくなくて、時雨は身を捩る。 そんな抵抗を圭は抱きしめることで封じた。 「時雨が俺の考え方を変えろっていうなら、変える!俺が卑下されてもいい!時雨が俺の番になって、結婚してくれるなら何だっていうことをきく!約束する‼︎だから……」 時雨のか細い肩へ沈めていた顔を上げ、圭は戸惑う小豆色の瞳を真っ直ぐ見つめた。 「俺のこと好きになって……」 お願いと、吐息で囁き少し開いた薄いピンクの唇に圭は自分の唇を重ねた。 びくんっと大きく身体を跳ねさせ、時雨は身を引こうとしたが、圭の強い力に押さえつけられ阻止される。 「ぁ……んぅ…、はぁ…」 圭の舌が口内を掻き回し、時雨の身体に再び火を付ける。 頭の芯がボーッとして、思考が回らない。 ただただ、目の前の男が欲しくて堪らなくなっていった。 「時雨、好き……。俺のものになって……いや、俺を時雨のものにしてくれ」 「んンァ……、っんぅ…」 愛を囁きながら圭は時雨が着込んでいった服をゆっくりと脱がせながら、耳から首筋にかけて舌を這わせた。 「時雨……、お願い。俺にチャンスを頂戴。……絶対後悔させない。絶対幸せにする」 顔を上げ、熱で潤む小豆色の瞳を見つめながら圭は誓った。 「絶対、俺のこと好きにさせるから」 だから、自分を受け入れてくれと頼み込んだ。 幾度となく好きだと囁き、顔から全身へくまなく丁寧で優しいキスの雨を降らせていく。 「や、やだっ……、もうやめっ…」 繰り返される愛の告白に時雨は恥ずかしさに全身を朱色に染める。 圭を直視することが出来ず、視線を泳がせた。 「時雨、こっちを見て。俺の名前を呼んで……」 「む、ムリだよ……」 羞恥に耐えきれず、ギュッと強く瞳を閉じる時雨の艶やかな熱を孕む頬を圭は優しく両手で包み込んだ。 「時雨……、好き。愛してる。一目で恋に落ちたんだ。時雨の言葉で俺は変われる。絶対変わってみせる。だから、チャンスをくれ!俺、どうしても時雨を諦められない……」 額から眉、眉から瞳、そして鼻に頬と愛おしむように時雨へ口付けながら圭は乞いた。 「ど、どうしたらいいの……?」 熱烈な言葉に根負けした時雨は困ったように聞く。 その言葉に圭の瞳が輝いた。 「俺と番になって欲しい!」 「それはちょっと……」 「じゃあ、結婚してくれ‼︎」 「………それもちょっと」 グイグイ攻めてくる要求があまりにハードルが高過ぎて時雨はやんわりと断った。 「時雨!お願いだからぁ〜…。絶対幸せにするからぁ〜……」 番にしてくれ。結婚してくれ。と、何度も駄々をこねるように頼んでくる圭に時雨は困り果てた。 「うぅ……、こ、恋人じゃダメ?」 苦肉の策で自分がなんとか歩み寄れるレベルの提案を時雨はした。 「恋人?」 「……………うん」 これ以上は譲歩出来ないと躊躇いながら頷くと、圭は少し考えたあと、大きく頷いた。

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