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4 水族館とあなたの隣とダメな僕7

「申し訳ないが、君には関係ない事だ。行こう、碧くん」  こんな女と話していても意味がないとその場を離れようとするのに、行く手を塞いでくる。 「ちょっと、関係ないとかどういう意味よ。一輝の恋人はあたしでしょ」  さらに突っかかってくる。  本当になんでこんな女と付き合ってしまったのか、あの時の考えなしだった自分を殴ってしまいたい。 「あの……一輝さんの恋人さん、なんですか?」 「そうよ。判ったら早く離れてよ。あんたじゃ一輝の隣に立つだけで恥ずかしいの。そんなこともわからないの? 本当になんでこんな子といるのよ」 「違うよ。私の恋人は君だ、碧くん。さぁ行こうか」  馬鹿みたいに吠えているリナを無視して先を促す。 「でも……」 「気にしなくていい。碧くんには関係のないことだよ」  悪しざまに言われているのに碧にはリナを無視することができないようだ。だが彼女は悪影響でしかない。無垢な碧に悪意を向ける人間など傍にいさせたくない。  それだけじゃない、綺麗な世界を見ている碧にこんな醜い顔を覚えさせたくない。  彼の見る世界は綺麗なままでいい。  なのに、リナは意地になっているのか何度も行く手を塞いでくる。さらには碧を一輝から引き離そうと乱暴にその細い腕を掴んで転ばせようとまでしてくる。彼女の手を叩き落とし、さすがの一輝も堪忍袋の緒が切れ始めた。  一輝にしがみついて来ようとする女の身体を乱暴に手で払いのける。  その時、別の方向から碧を呼ぶ声がした。 「(きょう)兄さん!」  碧の表情がふわりと明るくなる。  リナがいた一団の中から玄に似た顔つきの男が近づいてくる。次兄の突然の登場に強張っていた碧の身体がリラックスした状態に戻る。そして次兄の手招きに嬉しそうに近づいていく。 「なんなのよ、あの子! 菅原製薬の次男と仲がいいの? 狙ってたのに……まぁいいわ。一輝、すぐに撮影を終わらせるからこの後デートしよう。リナ欲しいバッグがあるの」 「うるさいな」 「え? どうしたの一輝。リナは一輝の恋人じゃん」  害虫を見るような目で彼女を見つめた。いつも優しい笑みばかりを浮かべている一輝の酷く冷たい一瞥に、リナは本能的な恐怖を感じ、身体を強張らせた。 「消えろ、クズ」  今までにないほど低い声で命じた。アルファの威嚇に、ベータのリナは本能的な恐怖にただ怯えるしかなかった。  静かな怒りが大きくなっていく。圧倒的な威圧にリナの腰が抜ける。  これで終わりだ。もう彼女はなにもできはしないだろう、アルファに威圧されてまだ近づいてこられるのは同じアルファだけだ。しかも一輝よりもずっと強い者だけ。  座り込んだリナから離れ、次兄と楽しそうに話す碧の傍へと歩いていく。  まだ怒りのオーラがその身にまとわりついているのか、撮影スタッフが一様に身体を怯ませる。

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