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第18話 ご褒美【R18】

 小さな子供が泣いている。それが自分だと何となく気が付いた。  知らない土地で、いつも周囲にいる大人は何故かいなくて、心細くて動けなくて、一人で立ち尽くして泣いていた。 「君、どうしたの? 迷子になっちゃったの?」  少し年上の男の子が、手を握ってくれた。  その手はとても冷たかったけど、泣いて熱くなっていた手を冷ましてくれた。  その冷たさが妙に安心できた。 「わからない。急に誰もいなくなっちゃって」  しゃくり上げて上手く話せない直桜の手を掴んで、木陰に連れて行くと、男の子がしゃがみこんだ。 「じゃぁ、ここで俺と一緒に待っていよう。迎えが来るまで、一緒にいるよ」  直桜は頷いた。  待っている間、男の子はいろんな話を聞かせてくれた。  酒呑童子の話、桃太郎の話、百済の妖怪の話。どれも鬼の話ばかりで、鬼目線の昔話はかなり新鮮で面白かった。  話している間、男の子はずっと直桜の手を握っていてくれた。 「ねぇ、僕たち、友達になれるかな。また会えるかな」 「君はどこに住んでいるの?」 「僕は、滋賀の集落。今日は特別に、京都まで連れてきてもらったんだ」  男の子の表情が、少し暗くなった気がした。 「君は、京都の人? この辺りに住んでいるの?」 「うん、俺はずっと京都だよ」 「僕、友達がいないんだ。だから、仲良くしてくれたら、嬉しいな」 「俺でいいの? 俺は化野の……」 「君が良いよ。君のお話、面白いから、もっと聞きたい。それにね、手を握ってくれて、すごく安心する」 「そっか。そんな風に言われたことないから、俺も嬉しいよ。もっとずっと、握っていようね」 「うん。ねぇ、君の名前はなんていうの? 僕はね」 「直様! 申し訳ありません。清祓が手間取ってしまいました」  とても焦った顔で、付き人が戻ってきた。  直桜の隣にいる男の子を見付けて、顔を引き攣らせた。 「直桜様に触れるな、卑しい鬼の子が! 最も清浄な気を纏うお方に穢れが寄って良いはずがない」  男の子が咄嗟に手を離した。  直桜の不安げな表情に気が付いた男の子が、慌てて手を伸ばす。  直桜がその手を握る前に、付き人が男の子を蹴飛ばした。  大の大人に思い切り蹴り飛ばされた男の子が遠くまで転がった。 「やめてよ、あの子は僕の友達だよ。痛いことしないで」  泣きながら、懇願した。 「アレとは友達にはなれません。直桜様の御傍に寄って良い者は、我々が選びます。穢れに触れてはなりません」  強く手を引かれて、歩かされる。  男の子を振り返って、ずっと見ていた。  蹲りながら手を伸ばしてくれているのが見えて、涙が止まらなかった。 (良かった、生きてた。ごめんね、本当に、ごめん。もう一度出会えたら、ちゃんと友達になろうね。絶対絶対、また会いに来るから。その時は名前を教えてね)  カーテンの隙間から差し込む光と、鳥の囀り。いつもの朝の音がする。  目を開くと、天井が滲んで見えた。 「あれ、俺、泣いてる……」  遠い昔にあったのかもしれない出来事は、曖昧過ぎて妄想か夢だと思っていた。  友達すら自由に選ばせてもらえなかった幼少の自分が作りだした、妄想の中の思い出なのだろうと。  子供の頃は自分がして良いこととダメなことがわからなくて、よく泣いていた。 「あの子って、実在すんのかな」  あれが現実で、彼が実在するのなら、どうか幸せになっていて欲しいと思った。  頭が痛くて、寝がえりを打つ。化野が眠っていた。 (えっと、何で一緒に寝てるんだっけ。昨日は確か、そうだ。清人と川越に行ったんだった)    帰ってきて、化野と一カ月記念の乾杯をしてからの記憶がない。   (この頭痛は二日酔い? そんなに飲んだかな。つか俺、相変わらず酒弱すぎ) 「ん……」  小さく声を上げて、化野が顔を傾けた。  向こう側に仰け反った項に赤い跡を見付けた。 (え、ナニコレ。キスマークみたい。もしかして、俺が付けた?)  急にドキドキしてきた。そっと手を伸ばして、跡に触れる。  閉じていた目がほっそりと開く。慌てて引っ込めようとした手を掴まれた。 「寝込みを襲ってくれるんですか。嬉しいですね」  まだ寝ぼけた目で、化野が直桜の手に口付ける。 「え? や、その。項に、跡、付いてて。俺が付けたんだよね、それ」  細めた目が、直桜を見詰める。  寝起きのせいかやけに鋭くて色香の漂う目付に、どきりとする。 「他に誰が付けるんです? 昨日、直桜が吸い付いて離さなかったんですよ」  腕を引かれて顎を掴み上向かされる。  雄みが強い顔に見下ろされて、胸の鼓動が早くなっていく。 「こんなにお酒に弱いのでは、心配になりますね。お陰で昨日もお預けです」 「お預……はんっ……ふ……」  唇を食まれて、舐め挙げる。  犯す舌が舌を絡めて、上顎を何度も舐める。 (なんか、いつもより深……、護、まだ寝ぼけてる)  くちゅくちゅと水音が響いて、やけに耳に付く。  体を引き寄せられて、熱いものが触れた。  服を握り締める手を解いて、熱く滾った股間に手を伸ばした。  布の上からでもわかるくらいに、硬く脈打つものを、そっと撫であげる。 (熱い……、もっと触れてみたい)  服の中に手を入れて、何度も撫でる。  緩く握って上下に動かすと、化野の腰がビクリと跳ねた。 「直桜っ……、そんなに触ったら、我慢できなっ……」  必死に耐える化野の顔が、可愛い。  もっと困らせてみたくなる。 「だって、すごく熱くて、はち切れそうだから」 「当然でしょう。何回、据え膳お預けされているとっ」 「祓うまでシない約束だろ?」 「昨日は、いいって……」  切なく潤んだ瞳が直桜を見上げる。  心臓が大きく高鳴った。 「じゃぁ、我慢した護に御褒美、あげるよ」  布団の中にもぞもぞと入って、化野の服を降ろす。 「え⁉ 直桜!」  下着を剥ぐと、硬くそそり立った男根がぶるんと跳ねて尚の顔にあたった。 (でか……、口に入るかな。鬼って、こっちもこんなに大きいのか……) 「初めてだから、下手でも文句言わないでよね。護の悦いとこ、教えて」  先に口付けて、舌先で先走りを舐め挙げる。穴に突っ込んで、ぐりぐりと犯すと、口に頬張った。  カリに沿って舌を這わせて、強く吸い上げる。 「ぅっ……」  ちゅくちゅくと漏れる水音の合間に、護の声が漏れ聞こえる。  それが嬉しくて、何度も強く吸い付いた。  裏筋に舌を這わせて、根元を手で扱く。  ビクリびくりと、腰が波打つ。  先走りで濡れたせいで、扱くとぐちゅぐちゅと卑猥な音がする。  いけないことをしているような背徳感が、直桜の心を煽る。  どんどん硬くなっていく竿を、また咥え込んだ。 「直桜っ、そこ、いい……」 「先が好き? 吸ってほしいの?」  化野の手が直桜の頭をぐっと押した。  大きな男根が喉の奥まで入り込む。 (え? 嘘、待って。こんなデカくて長いの、根元までなんかっ)  喉の奥をペニスで突かれて、苦しくて息が止まる。  涙が止まらず、唾液が溢れ出る。 「強く吸って、直桜……」  蕩けるような声が懇願する。  苦しいのに嬉しくなって、吸い上げながら喉の奥まで何度も咥え込んだ。 「ぁっ……も、出るっ……」  直桜の頭を引こうとする化野の手を遮って、深く咥える。  腰を掴んで、ぐっと強く抱き締めた。 「ダメ、直桜、口の中に出しちゃっ……ぁっ」  ペニスより熱いドロリとした液体が口の中いっぱいに流れ込む。  喉奥にあたる熱さが気持ちよくて、腰が痺れる。  口の中でビクビクと跳ねる男根を舐めあげて、ずるりと引き抜いた。  溢れそうになる白濁を、ごくりと飲み込む。  顔を上げると、化野が呆けた顔で直桜を見下ろしていた。 「飲んだんですか?」 「飲んだよ。飲まなきゃ、意味ないじゃん。俺の体内に入らないと清祓出来ないし」 「こんなに淫靡な浄化ってあります?」 「神事って元を辿ると存外エロいよ。巫女の神楽だって大昔は裸で踊ったストリップなわけだから」  化野が直桜の口元を指で拭った。 「今の直桜の顔が、何よりエロい……。涙と唾液と俺ので、ぐちゃぐちゃ」  嬉しそうに微笑む化野の顔も、色香を纏っている。  大きな手が顔を包んで、直桜の口元を舐め挙げた。 「護、鬼化して、また勃ってる」  股間に置いた手の下が熱く滾っている。 「その顔見て、興奮しない訳ない」  吐き出す吐息まで熱い。 「じゃ、する?」  耳元で囁いて、息を吹きかける。  大きな肩が、びくりと震えた。 「……する。ちゃんと優しく、慣らすから」  頬張るように口付けられて、抱き締められる。  熱い舌が這う度に、直桜の気持ちを甘やかに溶かしていく。  約束は、やっぱりもうどうでもいいと思った。 

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