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鈍感ジジイ

 帰り道、俺はチャラ男号の後ろでボーッと考え事をしていた。  何だったんだ今のは?  サプライズは成功したけど、何故か早川と中西が喧嘩して、それを見て戸塚がキレて……  まさか俺が女装したから?いやいや、確かに戸塚は見苦しいとか言ってたけど、二人は笑ってたじゃんか!   「なぁ早川~?何で中西と喧嘩してたんだ?」 「喧嘩なんかしてねぇよ。それよりそこの公園で着替えろ。そのままじゃ捕まるぞ」 「うお!コスプレしたままじゃねぇか俺!」  何か足がスースーすると思ったらこれはマズイ!早川が言う公園のトイレに駆け込み急いで制服に着替える。  着替えて戻ると、早川がガックリ肩を落としてブランコに座っていた。 「そんな落ち込むなら中西に謝れよ。仮にもあいつ誕生日だったんだぞ」 「落ち込んでなんかねぇよ。それよりも貴哉酒飲みたいんだろ?家来るか?貰いもんだけど置いてあるから」 「…………」 「さっきは悪かったよ。貴哉もコスプレまでしてくれたのに。月曜日、中西には謝るよ」 「ほう、あの早川が反省するなんてな!いいぜ一緒に飲んでやるよ」 「はは、サンキュー貴哉」  何か珍しく落ち込んでるみてぇだし、たまには付き合ってやるのも悪くないだろ。  早川の家は結構遠かった。俺ん家を通り過ぎて更に30分は走った。え、毎朝こんな距離走って来てくれてるのこいつ?  通り道とは言えめんどくさくね? 「到着。ここの10階だよ」  そこは綺麗でオートロックとかもしっかりしてるマンションだった。部屋の中も広くて綺麗。早川の部屋だって俺の部屋の倍はある。 「みんな良いとこ住んでんなぁ。なぁ、家の人は?」 「戸塚とは比べんなよ。ここ兄貴んちなの。今は二人で暮らしてる。兄貴は仕事だから朝までいねぇよ」  へー、それは新事実だ。  早川は缶ビールとちょっとしたつまみを持って手渡してくれた。そして二人で乾杯して飲み始める。 「ぷはぁ!やっぱアルコールないと飲んだ気しねぇよな」 「ジジイかよ」 「なんだよまだ落ち込んでんの?」 「別に。中西の事は気にしてない。てか俺間違ってないと思うし」 「何の事だよ?」 「戸塚と付き合ってる癖に貴哉にベタベタしてる事だよ」 「ベタベタって、してねぇけど?」 「この鈍感ジジイ!」 「はぁ?悪口かよっ」 「もう中西の話は辞めよ!ほらもっと開けるぞー」 「お、おう」  確かに中西とは席が近いから一番話す相手ではあるけど、あ、もしかしてそれで戸塚は俺にだけ冷たいのか。  その後もビール、日本酒、ハイボールなどいろんな酒を出して貰った。さすがに少し良い気分になってきたぞ。 「あ、そう言えば」 「ん?」 「さっきの命令聞くやつ今でもいいか?」 「まだそれ続いてたのかよ」 「もちろん」 「いいよやってやるよ。なんだっけ?なんて言うんだっけ?」  空様が何とかって言ってたよな。それを言ってからキス。今なら出来なくもない。が、それをして意味があるのか?セリフはともかく、男にキスされて嬉しいもんかね。 「空、愛してる。だよ」 「は?絶対違うだろそれ」 「似たようなもんだ。早くやれ」 「やだよ。絶対変えたもんセリフ」 「へー、貴哉はやるって言ったのに嘘つくんだー?」 「だってそんな恥ずかしい事言えるかよっ違う言葉なら言うよ」 「しょうがないな~。空が好き。それでいいよ」 「似たようなもんじゃねぇか!」 「ワガママ言わない!俺が折れてやったんだから早く言う!」 「はぁ……空、好きだぜ……」 「……貴哉」  そしてキス……。  早川に少し近付いてほっぺにちゅってしてやる。  すると早川が少し赤くなった気がした。酒のせいか?

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