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あ、元気でたー?

 怒ったら腹が減ったので売店で食料調達をしに来た。えーっとおかかおかかっと…… 「あら~?あなた授業はどうしたの?もう始まってるわよ」  おかかのオニギリを探してると、売店のおばちゃんに注意された。 「聞いてよおばちゃん、喧嘩しちゃったんだ」 「あら、ちゃんと謝ったの?」 「んーん。逃げて来た」 「ならさっさと謝って仲直りしなさいな」 「でもよぉ、何か複雑なんだよ」 「いいじゃない。今の内に沢山喧嘩して沢山悩みなさい。大人になったらそんな事してる時間なんてないんだから」 「さすがおばちゃんは言う事がちげぇな!何か元気が出るもんちょーだい!」 「それなら俺があげるよん♪」 「早川?」 「もちろんタダでね」  何でここに?って思ったけどきっと教室での出来事を誰かに聞いて追いかけて来たんだろ。  俺は教室に戻る気は無かったからそのまま早川に付いて行く事にした。  早川が向かった先は屋上だった。 「なぁ、元気出るもんはー?」 「見上げてごらん、この雲一つない大きな空を!まるで自分の悩みが小さく感じるだろ?」 「殴るぞ」 「あ、元気出たー?」  まんまと騙されたって訳か。まぁいいや、授業終わるまで昼寝でもすっか。  早川を無視して寝転がると、隣に座って覗き込んで来た。キスされるのかと警戒してると、ふっと笑われた。 「聞いたぜ?中西と喧嘩したんだって?」 「うるせー。俺は寝るんだ」 「珍しいよなあの中西がさ。何でだと思う?」 「知るか」 「貴哉の事が好きだからだよ」 「何言ってんだ。戸塚と付き合ってんだろ」 「そこは良く分からねーんだ。でも中西が貴哉を好きなのは確実」 「ちげーだろ。あいつが俺に怒ってるのは昨日誘いを断ったからだと」 「誘いを断って俺と帰ったからだろ」 「…………」 「中西も俺が貴哉の事を好きなの勘づいてるみたいだし、焦ってるんじゃね?」 「待て待て。戸塚と付き合ってるんだってあいつは」 「だからそこが謎なんだよ。何であの二人が付き合ってるのかは分からねーよ。とにかく中西は貴哉の事が好きなの」 「え、中西は好きでもねーのに戸塚と付き合ってんのか?」 「さあ?途中で貴哉の方が良くなっちゃったんじゃねーの?」 「…………」 「ま、俺は貴哉と冷やし中華食えればどーでもいいけど」 「……でだよ」 「何?」 「どいつもこいつも勝手な事ばかり言いやがって!何なんだよ!勝手に好きになったり勝手に怒ったり訳分かんねぇよ!」 「た、貴哉さん?落ち着いて?」 「落ち着いてられるか!」 「俺もだけど、好きになっちゃうのは仕方ないんじゃん?ほら人間だから」 「好きなんだったら好きな奴を困らせるんじゃねぇよ!」 「……貴哉」 「ちっ」  眠気も覚めちまったじゃねぇか!  ったく、ホント何でこうなるんだよ!  早川だけじゃなくて中西まで……  まるであの時と一緒だ。  思い出したくもないあの時と……

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