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第33話 新しい伴侶 ①

 オークションが開かれる日のギリギリまで、二人は時間を惜しむように愛し合った。  拓海は何度も雅成に愛の言葉を囁き、雅成も何度も拓海に愛の言葉を伝えた。  言っても言っても足らないと、繋がっても繋がっても足らないと、貫き貫かれ、突き上げられ、揺さぶられ、達してもなお、二人はは貪るように身体を重ねた。  室内に拓海の精の匂いと雅成の甘い蜜の香が混ざり合い、充満した中、二人はもう二度と這い上がれない盲目の幸せの沼の中に落ちていった。  その沼にも底があって、幸せにも終わりがあるということに気付きもせずに……。  雅成がぼやける視界がゆっくりと輪郭を取り戻していくと、雅成の視線の先に拓海のいた。 「ここ……は?」  うっすらと意識を取り戻していく中、雅成が聞くと、 「いつものホテルに向かう車の中」  雅成が顔だけ動かして運転席を見ると、そこには森本がいた。  また視線を拓海に戻し見上げていると、優しく頭を撫でられ、雅成はまたまどろみの中に落ちてしまいそうになる。 「雅成、大丈夫? 今日やめておこうか?」  頭を撫でながら拓海が言った。 「ううん。出る。だからステージの上で、みんなが嫉妬するぐらいたくさん愛して」  雅成が拓海の手の甲にキスをする。 「今日はあの子達も来るのかな?」 「来るよ。だってあいつら全員、雅成のことが大好きだからな。ま、雅成への愛は俺の足元にも及ばないけどな」  自信満々に拓海が言うので、雅成は「フフフ」と笑ってしまった。    雅成が言う『あの子達』とは嶺塚の闇オークションで魅せる(・・・)セッ◯スをしているキャスト達。  嶺塚の闇オークションのメインは女神である雅成と拓海のプレイだが、そのほかにもノーマルからアブノーマルのプレイを客に魅せるキャストも複数組いる。  ここではセッ◯スは見せるだけ。  客はキャストに挿入できないし、フェ◯をさせることもできない。キャストが許可をしないとキスもできないのが決まりだ。 「今日の客は参加費一億の太客ばかりだってさ。変なこと要求しなければいいけど……」  オークションでの客からの要求は嶺塚によって管理されていて、危険なことは全くないのだが、オークションの日の拓海は、いつも雅成が何をさせられるかの心配ばかりしている。 「太客だからって言いなりになるつもりはないからな」  拓海は何かに対して威嚇している。  そんな姿が可愛くて、雅成はまた笑ってしまった。  どんな小さなことからも守ってくれようとする拓海に、雅成は愛されていると感じる。  どこにでもあるような穏やかな日常ではないけれど、その中にある些細な幸せ。 「ありがとう拓海。愛してる」  雅成は上半身を起き上がらせ、拓海の頬にキスをする。 「俺もだよ、雅成」  覆い被さるように拓海が雅成にキスをした。

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