「また、あした。」といえる強さ
不思議な謎かけで始まる。書くことと読まれること、読むことと理解すること。生と死と渇望と諦観。ざまざまな対比を交えながら書かれた作品は、学園ものとしても、謎解きとしても面白いです。 海晴、颯介と須崎。三人の会話を通して、書くことに真摯な二人と、読むことに真摯な一人のそれぞれの立ち位置や心の動きが丹念に描かれてゆきます。 颯介の言葉は、もしかしたらこの作者の自分の作品に対する生真面目で厳しい視線から出ているんじゃないかと思うほど、まっすぐに海晴に向けられます。 冒頭の謎が解けるとともに、結び目を解くように明かされてゆく三人の気持ち。 異なるベクトルを持つ三人の過去と、現在の気持ちが交錯したさきにあった「あお」は優しさに満ちていると感じました。 最後まで表に出さないことでその存在感を増した須崎の気持ちの深さが、エピローグの最後の一行に込められているような気がします。