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第37話

猫獣人がどういう者かわからないので自分がと前に出ようとしたが、ウォーガが動く前にヴァーノンがさり気なく前に出た。 「そうだ。私は金糸雀族の鳥獣人、ヴァーノン。あなたは…?」 「金糸雀!通りで耳心地いい声だと思った。俺はリャジ。山猫族の猫獣人、リャジだ。同じ奴隷だから、警戒しなくていい」 猫獣人、リャジはニコ、と猫目を三日月に細めて人懐こい笑みを浮かべる。奴隷だというリャジには拘束具はなく、服装も自分達のクローゼットにあった物と同じようなのを身に纏い清潔だ。 ウォーガは同じ獣人の奴隷と言う事で警戒を弱めつつ、薄く広い背中から出て、隣に並んだ。 「俺は白亜の狼族、狼獣人のウォーガ。今日ここに買われた」 「白亜の?そりゃあ珍しい、その白銀の毛並みは確かにそうだ。普通の狼は黒か灰か赤茶だろう?」 「知ってんのか?白亜の森は海沿いの寒い場所で、白い岩場が多かった。言い伝えじゃ、ご先祖様が白いほうがいいと色を抜いたらしい」 「へぇ!お前らみたいな珍しい獣人、旦那様は相変わらず羽振りがいいな」 声は小さいが抑揚があって人懐こいリャジ。 ヴァーノンを褒めたり、ウォーガの一族を知っていたり、無愛想なウォーガや物静かなヴァーノンとまったく違うタイプだった。 「お前らは今から風呂だよな。今日は忙しいだろうから、また時間のある時に色々教えてやるよ」 ニコニコと笑うリャジにウォーガ達は頷く。気のいいやつだ。警戒心もないらしい。 「じゃあ、いつか」 「じゃあな」 「おう、あとでな」 リャジは手を振ってウォーガたちの部屋がある使用人用の棟へ入っていった。 ウォーガはそれをじっと見送って、特に不審な様子がないのを確認した。 手放しに信頼するわけじゃないが、悪いやつではないと思う。そう結論付けてヴァーノンに目をやる。ヴァーノンは相変わらずぼんやりしていた。 「どう思う?」 「…ウォーガは?」 首を傾げる金色。 珍しく聞き返すじゃねえか。 「同じ奴隷で獣人だ、過剰にすることはないだろ」 ヴァーノンはこくりと頷いて「そうだな」と賛同した。 手桶を持って二人で並んで部屋にもどると風呂桶の水はすっかり暖かくなっていて、ウォーガは沸騰石をくくっている細い麻縄を持ち引き上げた。 バサッと後ろでヴァーノンが服を脱いでいる音がする。一番風呂は譲ってやろう。コイツは基本的に自分を顧みないからわがままを言わせないと。 「ヴァーノン、先に入れ」 「ん…一緒にだろう?」 「…別でもいいだろ?」 キョトンとする彼に、黙ってしまう。 恥じらうわけじゃないが、この風呂桶は大柄な男二人を詰め込むと少し狭い。狭いと困る。 「それなりに、広いぞ?お湯が冷めると、勿体無い、時間も省ける。排水口があるから、溢れても大丈夫だ。お互いの裸なんて見慣れている」 不思議そうなヴァーノンにそう言われると、頑なに拒否するほうがおかしいか。 ウォーガは黙って服を脱いだ。
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