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第2話 -9
図書館の開館時間は午前9時。
結局、悟志は車の中から出してもらえず、暇潰し目的にゲームアプリを教えてもらい時間になるのを待っていた。
光の仕事については調べてもいないしましてや本人に教えられもしていない。まさか光が声を当てているキャラクターがいるゲームとは知らず、インストールまでやってもらったところで市倉に教えられ驚いた。
物静かで落ち着いた少年。本人とは大違いの性格に違和感しかない。それでも少しは欲しくなったのだが、そのゲームではレアなキャラクターらしく、なかなか手に入ることはないのだと言われてしまった。
携帯はバッグにしまい市倉に持たせる。まだ雨は降っていない。悟志は市倉を引き連れ館内へと向かった。
本が読みたいから連れてきてもらったが、これといって読みたいジャンルはない。土曜日だから人は多いが、此処に来るような知り合いもいないから話しかけられもしない。
本に囲まれ、静かな時を過ごせる。それが、図書館という場所を選んだ理由だ。
来たからには何か借りたいが、本の多さに目移りしてしまう。昔読んだ小説でもいいが、特に意味もなく目に留まった武術の教本もいい。
悟志は合気道の本を手に取り、少し離れたところにいた市倉を手招きして呼んだ。
「どうされましたか?」
「お前、合気道はできるか?」
「喧嘩以外は専門外ですね」
「なら借りるか」
「持ちますよ、他に何か借りるものは?」
「一人で見る。お前はベンチにでも座って待ってろ」
「いや、それは……」
当然だが、護衛としての仕事から離れることになり市倉は言葉を濁す。
その腕を、大丈夫だと軽く押した。
「こんなところで襲われるなんてほぼ有り得ないし、そもそも誰かに狙われたこと自体そんなにないだろ。多少は護身術も身につけてる。一人で平気だ」
「いけません。あんたはどうしていつもそう……」
少しばかり語気を強めた言葉は館内に反響し、すぐに視線が集まる。悟志は再度、今度はほんの少しだけ力を籠め腕を押した。
「もし何かあったらすぐにお前のところに戻って来る。少しは子離れしてくれ」
「親離れできてないクソガキが何を言うか。……わかりました、そこの椅子で待ってます。10分して戻ってこなかったら探しに行きますからね」
「わかった」
別に市倉が隣で見ていても構わないが、高い位置にある本を取ろうとしたときに視界の端でそわそわとしだすのが鬱陶しいだけ。悟志だって身長が低いわけではない。一番高い棚だって背伸びをすれば手が届く。過保護を通り越したそれに少しだけプライドが意地を張らせただけの話だ。
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