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第3話 -10

 時雨は2年生ながらサッカー部の副部長を務めているらしい。服装を正され、既にぐったりとしている悟志を連れ、見回りをしている教師に見つからないよう授業中の教室の前は通らないように隠れながら移動する。  自分一人で歩くこともままならない悟志は体格も変わらないのに時雨に軽々と背負われ、外まで連れ出された。  サッカー部の部室は校庭から少し離れた部室棟の中の一室だ。時雨は部室だけでなく、部室棟そのものの鍵も所持していた。  悟志が所持している屋上の鍵といい、時雨が所持している鍵といい、管理が甘過ぎるのではないか。悟志がそう言いたげなのを察したのか、時雨は見つからないよう部室棟まで移動しながら軽く笑う。 「俺、一応先生からの心象いいから」  疑わしいが真実を追究するような余裕もない。鍵を開け部室棟の中へ。もう隠れるような心配もない。一応中から鍵をかけ、悟志を連れてサッカー部の部室に入った。  泥だらけのスパイクにユニフォームが乱雑に置かれ、汗臭さが充満している。時雨は悟志を机に座らせるとその奥にある私物の入った自分のロッカーから避妊具と潤滑剤を出してきた。 「何で置いてあるんだ」 「ノンケじゃない後輩皆、此処で喰ったから。嗚呼、でもお前みたいに顔が好みなわけじゃなくて溜まってたからヤっただけ。抱きたくて堪らないのは九条だけだよ」 「だから何だ」 「そんな風に言っていいわけ? 放課後まであと1時間ちょっとしかないけど、俺が終わらせなかったらお前、ずっと俺に抱かれてサッカー部の奴等に見られることになるけど」 「……」 「本当は綺麗にしてからがいいけど、俺もそんな余裕ないし今日はこのまましよ」  幾つも机が並んだそこでは簡単に寝転がれる。時雨は悟志を押し倒しながらまたくちづけ、徐々に下衣を脱がせていく。  連れてこられてとはいえ、此処までやって来たのは自分の意思には違いない。悟志はどうにでもなれと背に腕を回しながらそれを受け入れた。  下衣は全て床に落とされ、足を広げさせられる。これより恥ずかしい格好もこれまで腐る程してきた。悟志は肌を撫で回しながら自分を喰らい尽くそうとしている男を見上げながら全て受け入れた。  自身の服装も崩した時雨は、悟志の肌を隠すアンダーシャツごと捲り上げ一瞬だけ言葉を失った。グロテスクと言えるほどの尋常ではない数の鬱血痕。全て父がつけたものだ。はっきりと所有物だと見せつけてくるそれに硬直した時雨に、悟志は小さく声をかける。 「嫌ならやめればいい」 「……やめない。むしろ燃えてきた」  自分ではない、誰か他の人の所有物を穢す悦び。時雨は、自らの痕は残さないようにしながらも痕がない首元へと噛み付いた。

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