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第3話 -13

 ゆっくりと体重をかけられ、埋め込まれるそれが与えてくる感覚に抗えない。痺れを伴っているような甘い震えが身体全体を侵してくる。  異物感よりも快感の方が強く、脳みそが麻痺していくよう。指が届かなかった奥の方までは拡げきれていなかった。圧迫されていくそれに息が詰まるも、首筋を噛まれ抜けていく。根元まで挿入されきった欲望を無意識の内にきゅうと締め付けていたようで、腰を撫でられた。 「痛い?」 「しびれて、もう、わからない」 「それ、気持ちいいんじゃなくて? 動くから、痛かったら止めろよ」  撫でられたままに腰を掴まれ、ゆったりとピストンが始まる。これだって、いつもと同じはずなのに。  二人分の体重をかけた揺れに机が軋む音が部室に響く。時間が経つのも忘れ、悟志は与えられる快感に流されるままに酔った。  5限目が終えるチャイムの音が遠くで聞こえた。教室に戻らなくてはいけないとどこかでは考えながらも、今まで受けたことのない大きさの愛を身体中で感じ離れたくないと時雨に抱きついたままやめられない。  唇が腫れるほどにキスを繰り返し、早くなってきた腰の動きに達してしまいそうになる。まるで動物のように盛って止まらない。 「九条、もうイきそう」 「ぁ、っ、あ」 「最初みたいにちょっと締めて。……そう、いい子。かーわいい」 語尾にハートでもついていそうな甘ったるい声。悟志の身体はそれに反応し、腰を振るわせ先に達してしまった。  下腹部がひくひくと震えるごとに中もうねり、時雨はそれに合わせるように掠れた声で小さく呻く。薄いゴム越しにわかる絶頂に、悟志は乱れた息のまままた唇を触れ合わせた。 「可愛いって言われて我慢できなかった?」 「……煩い、馬鹿」 「もう一回したい。いける?」 「好きにしろ」 「自分からキスしたくなるくらいメロメロな癖に」  そう言いながら、中から圧迫感が消えていく。引き抜かれ喪失感から手を伸ばすと、時雨はその手を取り、人差し指に噛み付いた。 「ゴム変えるだけ。帰りのホームルームの時間までには終わらせるから」  だから、もっとしたい。  避妊具の口を縛り、新たに装着した時雨はなんの躊躇いもなくまた挿入してきた。また訪れる圧迫感に異物感。父とするよりも遥かに消耗する体力に、これが本当の行為なのかと悟志は初めて思い知った。

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