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第4話 -4

 ずっと無理やりされ続け、自らキスがしたいと思ったのは今日が初めて。だからこその辿々しいそれが、自分でも嫌になる。それでも愛されることの証明に、市倉にも時雨と同じように触れられたい。  父と違うことはいつもの行動でわかっていて、自分相手に性愛を向けてこないことで安心感を得ていた。それなのに、今は抱かれたくて堪らない。優しく触れてほしい。自分が相手を好きだからではなく、相手が自分を好きだと思ってほしい。  嫌なら押し戻せばいいだけなのに、市倉は悟志のことを拒絶しなかった。辿々しく唇を食み、必死にキスを続けるそれを受け入れるだけ。  体の一部が触れているだけ。市倉はそう言っていた。だから何も反応しない。  それなら。悟志はその場にぺたりと座り込み、タオルを捲りその下に隠されたそれに触れる。指先が当たり、市倉は腕を掴み止めた。 「駄目だって言ってるでしょうが」 「勃ってない」 「ガキのキスくらいで勃つわけないだろ。いい加減にしてください、俺が殺されてもいいんですか」 「黙ってればいい。それに、駄目って言ってるけど嫌だとは言われてない」  拘束されているのは腕のみだ。悟志は身体を屈め、先端を舌で舐めた。 「っ、おい、こら」 「ん、ん……」 まだ洗っていなかったそれは少ししょっぱい。敏感なそれをざらりとした舌で舐められ、市倉は語気を強めた。  それくらい、怒られた時によく聞いているから効きやしない。悟志は両腕を掴まれたまま、舌での愛撫を続けた。 「こら、馬鹿、おいクソガキ……っ…」 「俺のこと嫌いって言ったらやめる」 「……冗談でも、そんなの言えるわけないでしょうが」 「ならやめない」  本当は肩を掴むなりすればやめさせられる。それでも、市倉はそれをしなかった。  舌での愛撫だって慣れていない。それでも敏感な部位は、辿々しく舌で舐め、横から食まれ、ちゅうと先端に吸い付かれるそれにわかりやすく反応を示した。  勃ち上がったそれに、悟志はさも嬉しそうに顔に触れさせ顔を見上げる。 「ちゃんと勃ったな?」 「……もう、坊ちゃんが何考えてんのかわかんない……」  考えていることなんて、愛されることだけ。今日時雨とのセックスで最後またフェラチオをさせられたが、根元の膨らみにも触れてほしいと言っていた。あれを思い出しながら、目の前にあるそれを舌で舐め、口に含む。はむはむと唇で刺激を加えながら舐め、裏筋を舌先で舐め上げまた先端を食んだ。歯を立てないように口腔で扱き上げ、市倉の味を覚え込む。  時雨のよりも、格段に苦い。不味いことには変わりはないがそんなのは些細なこと。自分の愛撫で達してほしい。それしか考えていなかった。

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