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第4話 -11

 夕方に眠ってしまったからか、悟志が目覚めたのはまだ陽も昇りきらない早朝だった。起こされなかったということは、まだ父は帰ってきていない。  流石に朝に父と、昼に時雨と市倉と行為をした身体は重く倦怠感を普段よりも遥かに感じる。毎日のように乱暴に抱かれているから父相手は負担に感じにくくなっていたが、あの二人との行為は優しかったはずなのに負担に感じてしまう。市倉の方など、時間にすれば長くともたった数十分かそこらだろう。それなのに、悟志の身体には強烈な違和感を残していた。 身体が動かない。立ち上がろうとしたが、腰に力が入らないようだ。  まだ暗いのにも関わらず、障子の向こうには人の気配がする。市倉かと思い、それを呼んだ。 「市倉、いるのか」  喉はまだ平気なようで、普段とそう変わらない声が出た。だが、そんな悟志の声に返ってきたのは若い男の声。 「兄貴なら3日ほど急遽休みをとりました。代わりに護衛を務めさせていただきます、澤谷です」 「……急用か何かか」 「詳しいことは何も。何かお手伝いできることはありますか」 血気盛んそうな声色に、これはあまり関わりたくない人種だと感じる。今にも部屋に入って来そうな様子に、悟志は否定の言葉を口にした。 「気配がしたから聞いただけだ。あれじゃないならいらない、具合が悪いから学校も休む」 「お風邪ですか? 昨日は早くに眠られたって聞きましたが」 「お前に話すことじゃない。起こすなよ、親父にもうつると良くないから入ってくるなって言っておけ」 「え、いやでも、親分には」  自分が話すには恐れ多い相手なのだろう。言い淀むそれには知らないことだと無視を貫き、布団の中に潜り込む。市倉が制服のポケットから出し充電しておいてくれたのだろう携帯を確認すると、時雨からの朝の呼び出しが書いてあった。昨日の今日で相手なんてしていられない。風邪で休むとだけ返し、怒ったらまた面倒だと光にも同じように学校には行かない旨を連絡する。  澤谷は何やら小さく文句を言いながら部屋の前から立ち去って行った。それでいい、市倉でないのなら世話係も護衛もいらない。  昨日は何も言っていなかった。突然の休暇宣言に、自分が無理に求めたのが原因かと考えてしまう。  布団の中で、膝を抱えて丸くなった。

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