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第17話 -2

 何日も経っているのに、今更連絡なんてと思われたらどうしよう。仕事の話はあまりしないから、今回も同じように都内のスタジオでの撮影だと思われていたかもしれない。海外に行くことを報告してすらいなかったから、時雨から聞いても連絡すらしなかった薄情だなんて思われていたらどうしよう。  今日は放課後まで学校で、終わったらラジオの収録がある。それが終わるまでには連絡が来るだろうか。どうでもいい人達からのメッセージしかないSNSは閉じ、目の前の惨状にじとりと視線を投げる。  今日は悟志がいないから、昼休みは屋上ではなく中庭に行くことにした。修学旅行で行動を共にすることになったメンツで集まるようになったらしく、優と冬馬と宵と、時雨。悟志に関して事情を知っている光と時雨は今冷戦状態で、2人が部活も一緒で仲も良かったのを知っている3人は困惑している。  俳優にアイドルに声優にモデル。芸能人なんて見慣れているだろうに、違う学年の普通科の生徒達は遠巻きにきゃあきゃあと黄色い声を上げながら光達を取り囲んでいた。 「落ち着いて食べられないね」 「俺はキャーキャー言われるの好きだから大歓迎だけど」 「宵だけだよ。光達何かあった?」 「べっつにぃ」  何があると言っているような光の言葉に、冬馬が説明しろと時雨を見やる。時雨は、苦々しい笑みを浮かべながら視線を伏せた。 「俺の所為だってことは言えるけど、理由は聞かないでほしい」 「……早めに仲直りしとけよ」 「別に俺怒ってないし、喧嘩したわけじゃないし」  光が一方的に怒っている。時雨も自分の所為だからと受け入れ、それでも既に何かに打ちのめされているよう。金曜日の朝から少し落ち込んでいた様子だったが、今日は輪をかけて酷い顔色になっている。  取り囲んでいる女子生徒達には聞こえないだろう声量での会話だから表面上は笑顔を貼り付けている光が激怒しているようには見えないようだ。声が大きい女子が仲がいいだのなんだのと、好き勝手言っているのが聞こえる。  悟志のことが原因だなんて思わない宵は、能天気に笑った。 「九条も早く熱下がればいいのにな」  まさか抗争が起きかねないから身を守るためなんて公にできるはずがない。悟志は熱を出して休み、ということになっているらしい。  そうだな、と時雨は元気なく笑った。

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