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第17話 -3

 学校にいる間は悟志からの連絡は来なかった。放課後すぐに都内のラジオ局で収録をする。今日は今月末に発売される1stアルバムの宣伝のために、数年続いている番組へゲストとして出演した。 「いやあ、それにしても本当に声だけ聞いたら女の子みたいだよね」 「本当に可愛くて羨ましい」  パーソナリティの男性と、レギュラーアシスタントの女性に口々に褒められ、謙遜することなくお礼を口にする。本当は嫌いだった声だけれど、悟志が褒めてくれたから自分でも認めることにした。  元は子役だった話も出つつ、今回出すアルバムについて話を弾ませていく。アイドル路線で売っているため可愛らしい曲ばかりで、BGMに流れている曲もサイケポップと言われるもの。 「男の子なんだしもう少し格好いい曲とか歌ってみたくない?」 「そういうのはまあ追々でいいかなって思ってるんですよね。ほら、若い内にこういうの歌っておこうみたいな」 「今の内に主張しておかないとやりたい役できなくなるよ。私も可愛いキャラしたいけど無理だもん」  男勝りな女性のキャラクターを演じることが多い女性の言葉に笑いが起こり、光も肝に銘じておきますと笑いながら返した。  ラジオ収録自体は無事に終わった。爪痕も残すことなく終わってしまったが、今日はただの宣伝だから気にすることはないよなんてマネージャーに言われてしまう。  稼げる内に稼いでおかないといけないのに、これで売れなくなったらどうしよう。そんなこと考えながら局を出た。  他に仕事もないからとチェーン店のカフェに入る。悟志からの連絡は来ているだろうか確認すると、誰かの代筆だろうか珍しく長い文章が入っていた。  ホテルを転々としているから誰かに会うことはできない。誰かに会えるのは来週以降。もしかするとそれよりも長い間学校には行けなくなるかもしれない状況で、連絡が来ても返信ができるかはわからないと。  残念だ。光は溜息を吐き頼んだブラックコーヒーを一口飲んだ。悟志のいる場所でもわかればと思っていたのだが、それも難しそうだ。  九条組が大変そうだというのは、市倉の昔の知り合いだったという父から多少は聞いていた。組長はあんな男だが、組自体は地域に寄り添う形で成り立っている。幼い頃からこの地域に暮らしている光の父には同級生に組の構成員も何人かいるらしく、そういう話も入ってくるらしい。  いつもは父がそういった話を自分にすることはない。するのは悟志に関係することだけ。なかなか幼馴染と一緒にいられることができなくなり落ち込んだ光のために、嫌いだと言っていた暴力団の人間から話を聞いてきてくれていた。その父が話すということは、悟志にも関係があるということ。  連絡があっても、ただの文章では悟志の安否はわからない。電話をしたかったが、迷惑がかかってしまうかもしれない。  どうしよう。自分が何をするべきか決めきれず光はカフェのカウンター席に突っ伏した。

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