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第9話 7、番

「番に」 「ん……は、い……」  那琉は頷いた。選択肢はひとつだ。ならば選ぶものもひとつ。  その思いには来栖は気付かない。今までの生きてきたものが違う。だから那琉のこの答えに秘められた思いには気付けない。  それでも純粋に番えることに喜びを感じる。  首輪に手が触れた。来栖の熱が伝わり、那琉は震えた。 「大事にする」 「……はい」  その言葉の意味を那琉は知らない。今までの生きてきたものが違う。だから来栖のこの言葉に秘められた思いには気づけない。  それでも純粋に嬉しいと思った。  首輪に手が触れ外された。今までずっとはめていたものだ。あるべきものがないことに動揺するも、来栖の熱がそこに触れる。唇を寄せられ熱い息がかかる。  食われる。  でも……。  ペロリと舐められた。もう一度もう一度と熱が伝わる。那琉は目を閉じた。見えていた僅かな光も見えなくなる。  感覚が研ぎ澄まされていくようだ。匂いが鼻腔に香り、そして首筋に這う熱に震える。  気付けば那琉はうつ伏せになり、尻を高く上げていた。そのまま来栖の熱い昂ぶりが挿入される。 「んんんん――っ」 「那琉、息をしろ」 「んはっ、あっ……あん――んん」  言われたとおりに息をする。小刻みに吐き出せば、いい子いい子とうなじを舐められる。それが嬉しくて那琉は笑んだ。ググッと圧迫を感じながら来栖が入ってくる。来栖を感じ、那琉は身をふるりと震わせた。すると来栖の舌が背を舐める。また、いい子いいこと舐められる。  ゆっくりゆっくりと挿入され、じれったい思いが浮かんでくる。それでも那琉はその思いを伝えられなくて。 「はっ、あっ、あ、やっ」 「那琉、那琉」  愛おしそうに自分の名を呼ぶから。かけがえのない宝物を愛でるように、来栖が名を呼ぶから。  食われてもいいと思った。  今この瞬間は食われるのも本能だと思った。  ああ、彼は兎じゃないと思った。 「大丈夫か」 「は、い……ぁっ」 「動くぞ」 「はい、あっ、あ、あんっ」  内壁を擦るように穿っていく。何度も擦られ快感が体中を走り抜ける。揺さぶられ舐められ撫でられ抱きしめられる。  こんなに愛おしく慈しむように抱かれたことはなかった。だから自然と那琉の目からは涙が滲んだ。  大事にすると彼は言った。  オメガは産むために生きている。  その僕を大事にすると言ってくれた。  それならば――。  愛おしいと思った。  好きだという感情を超えた想いに、那琉は気付いた。優しい言葉とは裏腹な熱い質量、そして腰の動き。性器を扱かれる熱。熱い息づかい。  それら全てに愛おしいと思った。 「はっ、あっ、やあっ、も、もう、あ、ああ、あっ」 「那琉」  来栖が最奥の扉をこじ開けるように侵入する。何度も何度も突かれ背がしなり、体を支えていた腕が崩れた。 「んんっ、んぁ――っ」 「那琉」  那琉の性器から白濁が放たれた。同時にうなじに熱い熱と痛みが走る。そして最奥の奥に熱い飛沫を感じた。 「ふあっ」 「那琉、大事にする……番だ」  牙の刺さる痛みに震えた。これが番だと思った。本能が歓喜している。求められ喜びを感じ、那琉は涙を流した。  彼の想いを受け取った。  例え今だけの約束でもいい。  この瞬間は……僕は求められた。  その事実だけで……生きていける。  那琉はそう思い決心した。瞬きをし、涙を払った。  その決心は今は来栖には伝えない。目を閉じると那琉は暗闇に落ちていった。  噛み跡を舐める。那琉の血の味が口内に広がり昂ぶった。 「那琉――愛してる」  その言葉は那琉には聞こえなかった。それでも来栖は伝える。 「例え兎と狼でも番になれる。俺たちは運命の番だ」  それを感じた。  心の底から那琉を欲した。その欲した彼が、今、番の証をうなじに残している。もう一度舐めた。血の味がした。それは甘い甘い味で、来栖は凪いでいった。 「ここで一緒に」  生きていこう。  その想いを込めて、来栖は那琉を抱きしめていた。
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