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第4話

 あいつが家事全般が得意だと知ったのは暮らしてからだし、それまではちょっと料理が出来る男、くらいの認識でしかなかった。 「考えるだけくだらないか」  今更考え直したところでなにかが変わるわけでもない。これからもあいつは傍にいるのだろうし、俺もそれを甘受していくのだろう。 「あれ? 主任、今日は早く帰らなくていいんですか?」 「え?」 「彼女さん待ってるんじゃないんですか? バレンタインですよ」 「あ、ああ」  そういやチョコを断る口実にしてたな。面倒くさいから実際に相手がいてもいなくても、相手が嫌がるから受け取らないと言うことになっている。これが一番効果的で手っ取り早い口実なのだ。  まあ、仕事のきりもいいので、今日は早々に退社することに決めた。残っていても周りが気を使いそうだしな。 「あ、そういやチョコ買ってこいって言ってたな」  しかも包装されたチョコレートを買ってこいとか、なんの罰ゲームだよ。しかし買って帰らないと駄々をこねてストライキされても困る。仕方なしに百貨店のチョコレート売り場に足を向けてみることにした。  けれど街中もコンビニすらもバレンタイン一色だ。チョコレート売り場など女たちの戦場。当日の夜なのに予想以上に人がいる。  俺みたいなのはいるだけでも目立って仕方がない。そもそもバレンタイン用に用意されたチョコレートを買おうというのが間違いなのだ。 「すみません、このレモンとオレンジのピールとガナッシュと」  包装されていればいいのであれば店頭で買えばいいだけのこと。混雑している中でそそくさと買い物を済ませると、女ばかりの波から抜け出した。  それにしてもほんの少しの時間なのに、なんだかエネルギーを絞り摂られたような気分になる。なんでみんなこんなイベントに一喜一憂しているんだ。 「告白するきっかけか? でも本命はともかく、義理チョコとか意味がわからないよな。そういう風習って面倒くさい」  社内でもチョコを配り歩く女子社員はいる。しかし義理なんてものは、送るほうも返すほうも負担がかかるだけのような気がするのだが。まあ、俺の面倒くさがりなところから見るとなんでも面倒くさく感じるのだろうけれど。
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