29 / 38

第29話 学校

ホテルから出て一旦家に戻り、制服に着替えてから学校に着いた頃には丁度お昼休みの鐘がなった。 午前の授業を終えた生徒が階段から降りてきては廊下が騒がしくなる。 「ゆーさくくん。おはよ。」 玄関の靴を履き変えていると背後から手で視界を塞がれた。 少し高めな女の声。 その主が振り向かずとも分かるため、深くため息をつくと塞がれた手を剥がして無視をして先に進む。 「ちょっと。待ってよ。」 「なんだよ。何か用?」 しつこく追いかけてくる女が鬱陶しく、眉間に皺を寄せながら振り向いては足を止めた。 真後ろに立っていたのは案の定、椿理友菜だった。 「今きたの?」 優作は無視を続けて前へと進み出す。 「ねぇ、ここで折角会ったんだから昼一緒に食べない?」 「いやだ。」 「何でよ。この前まで一緒に食べてたじゃん。今度は2人でねっ?いいでしょ?」 椿は肩に手を乗せてきてはお強請りをするような上目遣いでこちらを見てきたが、当然のように優作には効果はない。 「ねぇ、ってば。」 椿の言葉に返さず階段を上り、2階の踊り場まで上がった時、目の前を今会うのが一番辛い人物が降りてくるのが分かった。 優作は自然と足が止まる。 「椿先輩。」 健が階段を降りきると踊り場で向かえ合わせになる。 「可愛い柴犬くん。どうしたの?」 「これからお昼を買いに行こうかと思って……先輩は?」 彼は目の前に自分がいるのに挨拶どころか一切目を合わせてこなかった。むしろ、避けられている。 顔を赤くさせながら椿を見つめて離さない彼を見て酷く胸が締め付けられた。 「私はねーこれから優作君とお昼食べようと思ってて、柴犬くんも来る?」 「えっと……。」 椿自身はきっと健と自分の関係が断ち切られている仲であることは知らないであろう。 健は俯いては返答に困っているようだった。 健の内心は椿といたいけど自分がいるから行きたくないのが表情に出ていた。 あからさますぎるだろ……。 いくら俺でも傷つくんだけど 「ごめん。先約あるから。じゃあ。」 優作は不穏な空気がいたたまれず、2人を残して 健の表情を一切見ずに階段を駆け上がっていった。 こんなに好きだった人とすれ違って冷たくされて 苦しくなるのなら学校なんて休んでしまっても良かった。 独りぼっちの時であったらそうしてただろう。 だけど、そう嫌なことばかりでもなかった。
いいね
笑った
萌えた
切ない
エロい
尊い

ともだちとシェアしよう!