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第23話

 しつこいほどに愛撫され、全身が蕩けてしまいそうになる。理性もなくなりかけた頃、岬生は漸く後ろの秘めた場所へと何かを触れさせた。 「奥さんが亡くなってから全部捨てちゃったから、ちゃんと解せる道具とかないしゴムもないんだけど……ごめんね?」  先端がめり込むように自身に埋め込まれる。尖った部分はすんなりと身体も受け入れるが、その先が埋め込まれると圧迫感に呼吸すらもままならない。  苦しさと、痛みと、岬生が自分を抱いているという事実から来る高揚感とが綯い交ぜになりずぷりと入ってきたそれをきゅうと強く締め付ける。  狼のそれは人間である自分のものとは全く違う形をしている。大きく膨らんだ亀頭球まで押し込もうとするその腰の動きに、自分に種付けしようと本能で動いているのがありありと伝わり堪らなくなってしまった。 「みさき、さん、いく、もういっちゃうから、ぎゅうって」 「幾らでもしてあげる。痛くない?」 「も、きもちよすぎてわかんない、ぃ、あっ」  優しい声色と、ごりごりと内壁を抉ってくる動きのギャップに脳みそが蕩ける。襞が擦れ、人間の雄の性感帯なんて知るはずもないのに与えられる快感に猫のように喉を鳴らしたくなってしまった。  逞しくふかふかの腕に抱きしめられ、体格差から胸元に顔を埋める。  目の前で、銀色が光った。 「っ」 「あ、待って、そんなに締めたら……っ」  内股がまた痙攣を起こし、岬生の腹にかかってしまうほどの勢いで欲を溢れさせてしまう。達した時の痙攣と締め付けで、岬生も軽く達してしまったようで中に少しだけ何かが溢れる感触が生まれた。 「……ごめん、ちょっと出しちゃった」 「生でしてんだから、今更じゃないですか」 「そうかもしれないけど、ごめん……」 「ねえ、……もっと」  ちゃんと、自分の中でイってほしい。首の後ろに手をやりながら、毛並みを撫でネックレスの金具に触れる。  この人は自分とは結ばれてはいけない。子供だっているのだ、オメガ相手に現を抜かしてしまうのはよくない。それに、自分も岬生のこれからの人生をぶち壊したくない。  それでも、今は自分だけが愛されているのだと感じたい。  樹の言葉でまた激しく腰を振り、先走りで出てしまったそれを孕ませるために擦り付けるようなその動きに堪らない思いになりながらなんとかネックレスを外し、ヘッドボードの上に置く。外されたのもわかっていて、岬生はその手を掴み組み伏せるようにベッドに押し付けると、大きな口で樹の唇を奪った。  中に溢れる欲の感触。亀頭球はがっちりと樹のそこへと嵌め込まれ、溢れないようにと蓋をする。それでも腰の動きは止まらずに奥へ奥へと擦り付け孕ませるためのような動きをしながら今までよりも1番きつく抱きしめられた。  今日が終われば、岬生はまた良き父であり、誰にでも穏やかで優しいバーのマスターに戻ってしまう。  それでも、今だけは自分だけの岬生でいてほしかった。

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