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第24話

 朝になり、隣で眠る岬生に見つからないよう、逃げるように岬生の家を抜け出し帰った。抑制剤を飲み紛らわせ続け、土曜日も日曜日も、いつもはUboatに行き過ごしていたから暇で暇で仕方ない。  月曜日大学に行くと尾上に質問攻めに遭った。見捨てた薄情者には何も教えることはない。ただUboatに行くという誘いには断りを入れた。  もう、岬生には会わない。自分を好きにならない人が好き。だから、自分を好きになってしまった岬生はもう、自分の好きな人じゃない。抱かれてしまった今ではもう『ただの佐藤樹』ではなく、『オメガの佐藤樹』が好きな人だから。  講義を受け、ゼミに参加し、就職について準備を進めていく。そうやって過ごしていればきっと忘れられるはず。  1人で行動するようになり、誰も近付いてこなくなる。好都合だと樹は数日間独りで学校と家を行き来する生活を送っていた。  存外、行動するのは容易いことだった。Uboatに行くようになってからだって数ヶ月しか経っていない。それをただ元の生活に変えるだけ。友人は減った気もするけれど、それ以外は変わらない日常に戻っただけだ。  今日で丁度1週間。講義を受け、まっすぐ家に帰ろうと正門に向かう。すると、背後から声をかけられた。 「佐藤、ちょっといい?」  振り返ると、あの合コンの時に絡んできたアルファだ。見なかったことにしよう、そう思い顔を逸らす。  当然それではい終わりとなるわけもなく、男は肩を組んできた。 「無視すんなよ。なあ、最近暇そうにしてるし遊びに行かね?」 「行きませんね」 「そういうなって。前までしてたアルファの匂いもないし、最近遊んでたアルファと切ったんだろ?」 「……お前、何言ってんの?」  アルファの匂いなんて、岬生のことしか思い浮かばない。それでも知られるわけにはいかない。シラを切り軽く振り払うと正門へと向かった。

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