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第26話

 Uboatがある方向へと車を走らせていた岬生は、暫くしたところで路肩に停車した。どうしたのだろうかと眺めていると、岬生はぽつりと零す。 「ごめん、嫌われたかな」 「……好きじゃなくなる努力はしてます」 「しなくていいのに。俺がたつくんを好きになったら駄目なの?」 「駄目です。どうせ嫌いになるから」 「なってみないと先のことなんてわからなくない?」  それじゃ駄目だ。どうせ離れて行くのはわかっているのだから、友達以上になりたくない。  意固地なまでの樹の拒否反応に、岬生は視線を逸らした。 「紫さんのことがあるから?」 「それに、息子さんだっているのに」 「じゃあたつくんは、俺が一生紫さんのことを忘れられないまま独り身で子供を抱えて生きていけって言うんだ?」 「違う、違います。俺はただ」 「俺は君がオメガだから抱いたんじゃない。可愛くて堪らなくて、俺のものにしたかったから」 「……どう違うんですか」  同じ意味にしか聞こえない。今すぐ車から降りてしまいたい、樹はシートベルトを握り締めた。  発情してしまって、衝動的に抱かれただけだ。オメガとして好かれただけ。それでも、好かれてしまったことには変わりないから離れないといけない。それなのに、岬生は違うと何度も口にする。 「確かに、番にしたくて堪らなくなった。でも、それ以上に君自身が好きだから。オメガじゃなくて、君が」 「同じことだろ」 「違うよ。君が俺をアルファじゃなく天見岬生として好きになってくれたのと同じこと。気付くのが遅くなっちゃったけど、こんなに人を好きになったのなんて紫さん以来1人もいなかった。でも紫さんみたいにただのパートナーなだけじゃ満足できない、君をどうしても番にしたい。……ごめん、矛盾してるね」 「……俺は、俺を好きにならない人が好きだから」 「じゃあ、君のことが大好きで、番にしたい俺のことはもう嫌い?」  穏やかで、落ち着いた声。涙を零しそうになりながら、樹はふるふると首を振る。

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