29 / 33
第29話
ベッドはまだ先なのに、我慢ができない。抑制剤も切れてきた。発情期のフェロモンのむせ返るような甘さで岬生はその場に押し倒し、樹のデニムに手をかける。
大きな手に似合わぬ器用さでフロントホックを外しずり下ろすと、普段は毛皮の下に収納されているはずの自らの赤い欲望も露出させた。
「まだ入れないから、少しだけ触らせて」
大きな掌の肉球が双丘を揉みしだき、その間に欲望を挟み込むようにして擦り付ける。樹はただそれを受け入れ、時折秘めた場所に触れられ腰を跳ねさせる以外は岬生が気持ちよくなるようにと動かなかった。
床に体を押し付け、大きく腰を突き出すような格好。素面なら絶対にできない。でも今は発情期だから。言い訳のように脳内で繰り返しながら、挿入されてもいないのに激しく揺さぶられる腰に触れている熱い感触に、早く欲しいと喉を鳴らす。
暫くすると、岬生は達するよりも先に樹の上体を起き上がらせた。今にも射精してしまいそうな硬く張り詰めたものはそのままに、樹を抱き上げベッドへ。
「いきなり擦り付けてごめんね、今解してあげるから」
「……あのまましてもよかったのに」
「駄目だよ、それじゃレイプと変わらない」
透明な潤滑剤に、人間用の細い玩具。岬生のような手が大きい獣人が相手の人間用に作られた、後ろの秘めた場所を解すためだけにある玩具だ。
岬生は自身の昂りに避妊具を装着するとそれに潤滑剤を塗りつけ、ゆっくりと挿入してきた。
たった一度岬生のものしか挿入されたことのないそこは、オメガだからかすんなりと細いそれを受け入れる。ただの作業的な動きでも反応を示す身体に、岬生が興奮していることは避妊具をつけたそれが脈を打つように揺れていることでわかった。
早く欲しい。樹は身体を起こし、岬生に覆いかぶさるように抱きついた。
「まだ? な、まだ?」
「まーだ。一番細いのしか入ってないでしょ」
「ひっ、ん、ぁ、あっ」
抱きついたままに中に挿入されている玩具を少しだけ激しく動かされる。グチュグチュと水音を立てかき混ぜられるように解されるそれに、啜り泣くような嬌声が漏れ出た。
「も、やらぁ……」
「この間だって少し痛そうにしてたし、ちゃんと気持ちよくなって欲しいからあと少し我慢できる?」
「むり、もう、ほしい、これほしいから、みしゃしゃん」
快感に名前すらちゃんと呼べなくなる。岬生の昂りを手で包み込み、樹は欲しいと強請った。
呂律も回らず生理的な涙を流すそれに、頰を撫で長いマズルではし難いだろうキスをする。ただでさえ満足に呼吸もできずにいた樹は、全ての意識を奪い取られるような激しい愛撫に酸欠状態に近くなり、逃げるために背を弓形に反らした。
ともだちにシェアしよう!