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第6話(side阿賀谷)

 俺の目の前に薄っぺらい刃物を表情を変えずに突きつける男。  相変わらず何の感情も読み取れない食えない表情、容赦しらずの冷酷非道。  多分こいつは、俺を殺そうと思えば躊躇せず息の根を止めるのだろう。足が付かないように多方面に手をまわして、事故か暗殺にでも偽装するんだ。  仮にも相棒に冷たい男だ。  もうこいつと組んで何年もたつのだが、情が移ってないというか移す情があんのか?そもそも。  つかなんで今日コイツこんな機嫌わりぃの?俺が怒ってんのはわかるけど、コイツがイラついてんのおかしくね?  機嫌が悪い相棒なんか久しぶりに見た。俺ってばタイミングの悪い男?  たらりと垂れた冷や汗を拭って、ひきつった笑みを浮かべる。笑うしかねえ。 「あーとりあえず入れてくんね?仕事の話だけど、玄関先でする話じゃねえし」 「帰んな」 「仕事の話だっつってんだろ馬鹿たれ」 「へぇ…」 「ごめん馬鹿は俺です」  首筋に当たった金属は冷たかったです。  しかし、くだらない悪さに命を懸けている俺としては、こんだけかたくなに拒否されると逆に気になるってもんだ。  普段の相棒なら絶対俺のその性質を分かっているからうまく意識をそらすか、大事じゃねえふりをするんだ。でもそれすらかなぐり捨てて頑なに拒否。気になる。  相棒はそもそも何かに執着すること自体稀だ。無に等しい。仕事の話だって言っているのに、仕事すらどうでもいいのか?  この先に何がある。  今までがかすむほどの大金か?値がつけられねえほどの宝石か?それとも、愛だの恋だのから最も遠い位置にいた相棒を虜にするほどの絶世の美女か?俺は腹に飼っている好奇心の魔物を揺り起こさずにはいられない。 「なあここんとこ寒くなってきたし、いれてって!ほんとお願い!お前が外でて仕事はいやだってんなら、うちでできるようにサポートするからよお~そのはなしもしてえし、な?」  パンッ、と手を合わせて軽く頭を下げて見せる。  好奇心がぐつぐつ言ってやがるぜ。悪人どもの間で〝毒蜘蛛〟と名高い男の宝物、拝見させてもらうか。  巣にかかったが最後絶対に逃げられない、じわじわと毒殺されるように骨までしゃぶられる。極悪非道の俺の相棒様。  しばらくの沈黙。  すっと突きつけられていたものが離れていった。 「必要外の言葉を発するなよ?幸運だぜお前さんは。じゃなきゃ、目玉えぐって鼓膜引き裂いて喉焼かねえと、宝の前に立たせやしねえから」  そう言って入り口をふさいでいた体をずらした相棒の目は、少しも冗談を感じない吹雪みたいな目をしていたから、その言葉には本当に嘘偽りなく本気なんだと悟る。  あれ、やっぱちょっと早まった?
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