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第1話

「まじか……」  浩之はトイレの個室で項垂れた。  その手には陽性のラインがついた妊娠検査薬。 (まずい、誰になんて説明すれば……)  らしくもなく、しばらく個室のトイレで座り込んだ。 **  ひと月ほど前。  遙が酷く怒って、浩之の転勤先大阪から、実家に帰ってしまった。  そこで追いかけず、関係を解消することを浩之は本気で考えた。  まともじゃない関係。遙ばかりを悲しませる関係は浩之にとってもつらいものがあって……。  そろそろ互いを考えれば、このまま別れるほうがまともだろうと思う。  そう本気の恋を諦めた……はずだった。 「出張ですか」 「そう規則だからさ、お願いね。二週間東京のほうで。ほら家族にも会えるだろう? 自宅から出勤しできるし」 (東京に慣れた俺が指名されるのは、仕方ないことか)  家庭を東京に置いてきたことを、気遣ってくれたとしても……浩之にとって苦い感情しかない。  手続きを済ませ、荷物をまとめる。  自宅からなら洗濯や食事には困らないだろう。最低限でいい。  そうして東京へ向かう。
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