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第2話

 実刑が決まった。  なんだか茫然としているうちに、いつの間にか決まっていた。  あの後……不運にも依吹が痴漢容疑で警察に連行されると、弁護士を名乗るひとが来て、否認するだけ印象が悪くなって無駄に拘留されるだけですと滔々と説得されて、頷いたらなぜだか罪を認めたことになっており、気付けば公判で実刑判決が下されていた。    なぜだ。  依吹はただ、痴漢をされただけなのに……。  四月から新社会人として働く予定だった依吹の新生活は、まさかの刑務所で幕を開けることとなった。    依吹と同じ日に収監された男たちが、刑務官に言われるがままに、ひとり、またひとりと配属された房へ入ってゆく。  これからここで集団生活を送らなければならないのか、と依吹は憂鬱になった。 「おまえはこっちだ」  ため息をかみ殺した依吹の腕を、刑務官が掴んでほかの男たちとは別の方向へと引っ張ってゆく。  連れて行かれたのは、小さな部屋だった。  窓やドアには格子がはまっており、トイレが丸見え状態であるところはやはり監房であったが、ベッドや冷暖房、おまけにテレビまでついているその様は、安アパートの一室のようにも見えた。 「おまえはこの部屋付きだ。まぁ頑張りな」  刑務官が笑いながら依吹を部屋へと押し込み、去ってゆく。    ここは……個室なのだろうか?  なぜ依吹だけが他の受刑者と違う待遇なのか……。  依吹はおどおどと室内を見回し……一体自分はどうすればいいのか迷いに迷った末、ベッドの端に腰を下ろした。  最初は緊張していた依吹だったが、ここ数日ストレスで眠れぬ夜を過ごしていたため、やがて疲れがピークに達し、抗いきれずにベッドに横たわる。するとすぐに瞼が眠気で糊付けをされてしまった。    寝入っていた依吹は、もぞもぞと下腹部から這い上がってくる感触で覚醒した。 「……ん~」  寝ぼけながら、依吹は何気なく視線を下へと向ける。    そこでは、男が二人、依吹の陰茎をこねくり回していた。 「……えっ? な、なにっ?」 「あ、起きた」  声を裏返らせた依吹を見て、髪を短く借り上げた男が笑った。 「初日から昼寝とか、イイご身分。あ、俺、滝村っつーの。こいつは真鍋」  呑気に自己紹介をされたが、依吹はそれどころではなかった。  真鍋、と指差された強面の男が、リズミカルに依吹の肉棒をこすり立ててきたからだ。 「ちょっ、やっ、やめてくださいっ」 「いーじゃんいーじゃん。俺たちはイブキちゃんを仕込む役。イブキちゃんは快適な個室で気持ちイイ思いするだけで刑期が全うできる楽ちんな役。ウィンウィンじゃね?」 「あっ、ちょ、い、意味がわかりませんっ、や、やめてっ」  くびれの部分をぬちぬちと刺激され、腰が震えた。  なぜ依吹は。  刑務所の中で下半身を露出させられて。  男に性器を触られているのだ。  展開がぶっ飛び過ぎていて、理解が追い付かない。 「よし、感度は悪くねぇな。おら、足広げろ」  ピシ、と内股を叩かれ、真鍋という男に強引に開脚させられた。 「お~、ちっせぇ孔。どれ、ナカの具合は、と」  にゅる……と冷たいなにかが後孔に挿れられた。 「ひっ……」  依吹が肩を竦めると、 「大丈夫大丈夫。タダのローションだから」  と、滝村がヘラヘラと笑った。  それから滝村は、依吹の両手を頭の上にばんざいするように上げさせ、膝で器用に抑えてきた。  依吹は男の膝下から手を引き抜こうとしたが、不意に後孔に真鍋の指を挿入され、ぎくりと体を強張らせる。 「な……っ、や、やめてくださいっ」  そんな場所に侵入されたのは初めてで、ぞわっと鳥肌が立った。  真鍋が無遠慮に指をぐりぐりと動かしてくる。 「や、やめっ……あっ、え、や、やだっ」  依吹は悲鳴のような声を漏らした。  男の指が、ある一か所を掠めたからだ。  なんだこの感覚は。  そこに触れられると、腰が無意識に跳ね上がり、鋭いまでの快感が爪先まで駆け巡る。 「なっ、なにっ、や、やんっ、あっ、ああっ」  ビクっ、ビクっ、と反応した依吹の頬に、ぼろん、となにか熱い塊が押し付けられた。  なにかと思って見てみれば、それは滝村のペニスであった。 「後ろは真鍋に任せて、口は俺が躾けてあげるね、イブキちゃん」  ふに、と先端を唇に擦り付けながら、滝村が依吹へと微笑みかけてくる。 「若が来るまで一週間あるから、それまでにしっかり覚えようね」    依吹は……。  まったく事情が呑み込めないままに……。  男の太い指に前立腺をコリコリと弄られて、 「ひぃ……んっ」  と、喘ぎを漏らしてしまった。 「よし。いい返事」  返事をしたわけではなかったのに、滝村がそう言って、開いた依吹の口の中へとペニスをねじ込んで、笑った。   

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