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第4話
その男は井邑 組組長の末っ子、井邑達樹 そのひとだ、と滝村が説明した。
曰く、達樹は気が短く感情的で、考える前に手が出るようなタイプの男で、今回は余所の組の人間が井邑組のシマで女絡みのトラブルを起こし、それを知った達樹が制裁と称して半殺しの目に遭わせたために逮捕されたらしい。
「組長は若を買ってるケド、その血の気の多いトコを反省して来いっつって、今回は揉み消しはなかったワケ」
今回は、ということは以前にも同様のことがあったのか……。
「女に手ぇ上げる連中は殺してやりゃいいんだよ」
タバコをふかしながら、達樹がそう吐き捨てる。
「若の場合はやりすぎだ」
真鍋がぼそりと呟いた。彼の唇にもタバコが挟まっている。
刑務所なのにタバコなんて好きに喫えるのか……と依吹がぼんやり思ったら、滝村がにんまりと笑って親指と人差し指で輪っかを作った。
「カネだよカ、ネ。大体のことはカネで上手く回るようになってんだよね~。この部屋も、俺と真鍋が先に入って、若が過ごしやすいようにって色々揃えてもらったんだし。まぁ、組長が警察の偉いさんと仲良しってのもあって、交渉はしやすかったけどね~」
なんということだ。やくざと警察が癒着している。ずぶずぶだ。
「ハコは整ったから、後は人間だ。刑務官は買収済。俺と滝村はお世話係。そしておまえ」
「手垢の付いたオンナを若に宛がうわけにはいかないからね~。真っ新な体の、若のお気に入りのイブキちゃん。若。一週間かけて俺と真鍋で開いたんで、楽しめると思いますよ」
「口も仕込んであります。お好きにどうぞ」
好き勝手に言われているのに、依吹は反論することができなかった。
すでに滝村と真鍋の手によってとろとろにされているからだ。
全裸でベッドに転がされ、全身を触られて、もう達する寸前であった。
達樹が、タバコを灰皿へと押し付け、ぎし……とベッドを軋ませて依吹へと圧し掛かってくる。
「蕩けた顔しやがって」
くっと唇の端で笑って、達樹が下半身をくつろげた。そこから飛び出したのは、凶悪なまでに大きな肉棒だった。
達樹は、依吹の体をうつぶせにさせて、使い込んだ色のそれで尻の割れ目をこすってきた。
「ああ……あっ、あっ」
尻たぶを寄せてそこにペニスを挟んだ達樹が、腰を軽く揺すると、滝村と真鍋に散々弄られた依吹の後孔がひくひくと蠢いた。
「欲しいか?」
意地悪く問われ、依吹は我慢できずに頷いてしまった。
指ではもう足りない。尻の狭間を行き来しているそれを、中に挿れてほしい。
達樹が喉奥で笑い、ぐ、と無造作に怒張を突き入れてくる。
「え、あっ、あああっ」
依吹の背が弓なりに反らされた。
痛みはなかった。
指で散々嬲られた前立腺が、ごりゅっと押されて、依吹の性器からぴゅるっと白濁が飛んだ。
「挿れただけでイきやがった。おい、まだだぞ」
脱力しそうになった腰を掴まれ、そのまま揺さぶられる。
「うあっ、あっ、あっ」
深い場所を、こんなに長く太いもので責められるのは初めてなのに……依吹は頭が真っ白になりそうなほど感じてしまっている。
「~っっっ。あっ、あんっ、あっ、あっ」
閉じられない口から、唾液が零れた。
「若、容赦ないねぇ」
「初めてでガン掘りだ。ありゃたまらねぇだろ」
「いや~、でもイブキちゃん、イイ顔するよね」
「若に頼んでみろよ。一発やらしてくれって」
「無理無理。俺死にたくないって」
「おい、聞こえてんぞおまえら」
達樹がベッド脇の二人へと、言葉を放って。
パンっ! とひと際深く依吹の中を穿った。
「ああああっ!」
耐え切れずに、依吹は絶頂へ押し上げられた。
射精はなかった。
中だけの刺激で、女のように達したのだった。
ビクっ、ビクっ、と痙攣する依吹の足を、達樹の手が掴む。
繋がったままで、うつ伏せから仰向けへとごろりと回された。
「ひぃっ」
角度の変わったそれに、依吹はまた体を跳ねさせた。
「ん~?」
依吹を見下ろした男が、顎をつるりと撫でて首を傾げる。
「なんか違うな」
鋭い眼光が、獲物をいたぶる肉食獣のような色を浮かべる。
そのとき初めて、依吹は自分を組み敷いている男が、実はすごく整った顔をしていることに気付いた。
物騒な気配をまとっていたから、まともに視線を合わせることができなかったけれど……。いま、こうして男を見上げると、すっと通った鼻筋ややや吊り気味の瞳など、それぞれのパーツが絶妙である。
仰向けで改めて達樹の顔を見て、自分は男と性交したのだと遅まきながら自覚した依吹の頬が、カッと赤くなった。
男のあれを後ろに挿れられてあられもない声をあげて達してしまった、という羞恥が、生々しく込み上げてくる。
依吹は男から視線を背け、両手で顔を覆った。
「それだ」
と達樹が呟いた。
どれだ、と思った瞬間、前触れもなくぐぽっと男の性器が引き抜かれた。
閉じ切らない孔から、ローションのぬめりが垂れる。
依吹が焦って後孔を隠そうとするよりも早く、達樹に腕を掴まれてベッドから起こされた。
「えっ、な、なにをっ」
声を上ずらせた依吹の体を、達樹が黙って引きずり、ガシャンと格子状になっている扉へと押し付けた。
冷やりとした鉄の感触が肌に当たる。
「見ろ」
背後から伸びてきた達樹の手が、依吹の顎を掴んで顔を上げさせた。
依吹の視界には、廊下が映っている。
「おまえが声を出したら、看守が飛んでくるぞ」
ここは通路の一番奥で……いまは誰も居ないが、誰かが通りかかったら依吹が全裸で男に犯されている姿を見られてしまうだろう。
達樹の低い囁きに、背がぞわりと震える。
「見せてやるか? おまえのこの……小さな乳首も」
言いながら、達樹が摘まんだ依吹の乳首を、鉄格子にぷにぷにと当てた。
依吹は真っ赤になりながら、自分の口を手で塞いだ。
「看守が来たら、向こう側から吸ってくれるだろうよ。どうする? 呼ぶか?」
意地の悪い問いかけに、依吹は必死で首を横に振る。
「そうか? おまえのコレも」
コレ、と言いながら達樹が触れたのは、依吹のペニスだ。
勃起しかけているそれを、握られ、格子の隙間から外へと出された。
「ああっ。いやっ、いやですっ」
依吹は咄嗟に腰を引こうとしたが、そこには達樹の雄々しい陰茎があって……依吹は自分で、ずぷぷ、とほころんでいた孔にそれを迎え入れてしまった。
「んん~っっっ」
腹部を波打たせて、依吹は悶えた。
こんな……誰にでも見える場所で抱かれるなんて……。
恥ずかしい。
恥ずかしくて死にそうだ。
ああ、と、熱い吐息が依吹の耳を掠める。
「それだ。その顔だよ」
喉奥で達樹が笑った。
ばちゅん! と腰を叩きつけられた。
「ああっ! あんっ、あっ、あっ」
揺さぶられる度に衝撃を受け止めきれなくて。
依吹は鉄格子に縋って喘いだ。
ガシャン、ガシャンと格子が鳴る。
「依吹」
掠れたセクシーな声が、初めて依吹の名を呼んだ。
「おまえは痴漢されて悦ぶ変態だ。見られるかもしれないと思うと、嬉しいだろう?」
と、達樹に暴かれて……。
「あっ、ああっ、は、恥ずかしいっ、あっ、あっ」
「恥ずかしいのが、好きだな?」
ぬぷっと奥を貫かれ、依吹は喘ぎとともに答えてしまった。
「は、はいっ、あっ、す、好きですっ、あっ、あっ」
内側で、達樹の欲望がひと際大きく膨らんだ。
浅い場所と奥の感じるところを同時に刺激され、依吹は一気に絶頂まで押し上げられる。
「ひぁっ、あ、ああああっ!」
声なんて、もう我慢できなかった。
嬌声と一緒に鈴口からは白濁が飛び出し、それは格子の外の廊下へと散った。
依吹の中には、達樹の熱い奔流が叩きつけられて。
中を汚される感触に……依吹はこれ以上はないというほどの悦楽を感じ、そのまま意識を手放したのだった。
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