5 / 10

 もうすぐ絵が完成しそうだという頃です。  その夜も、白い浴衣を着せられました。  これが用意されているというのはつまり、藤野との情事を、ご主人に披露する日ということなのです。  数か月かけて教え込まれた身体は感度を増し、乳首でさえも性器と同じ快感を得るほどになっていました。  藤野に後ろから串刺しにされ、一突きで達し、しかし律動は止まることなく、僕を追い詰めます。  ああ、また果てそう――という時、襖がパンっと小気味いい音を立てて勢いよく開かれました。  目に飛び込んできた人物に、僕はひゅっと息を呑みました。  どうして、なぜ、ここに。  目を見張って立ち尽くす男。土塔がそこにおりました。 「康慈(やすちか)さん……」  愛おしい後輩が、この名を掠れた声で呟きます。 「彼が、君の様子を見たいと尋ねて来てね」  ご主人の声が遠くで聞こえます。 「土塔……あぁっ」  藤野が抽挿を再開しました。 「やめろ、藤野。……止まれっ」  しかしこの声を、彼が聞き入れることはありません。 「続けなさい」  ご主人の命令が、彼の絶対です。  僕は強く目をつむりました。  土塔に醜態を晒していることが、耐えられません。 「あっあっ、見るな、見るな、土塔……あぁああ――!」  浅ましい身体は、こんな時でも快楽を享受するのです。  僕は愛しい土塔の前で、藤野によってあっけなく達しました。 「……これが、あなたのしたかったことなんですか?」  そう力なく零した声に伏せたまま目だけ上を向くと、揺れる瞳と視線が合いました。  違う。違う。土塔、これには事情があるんだ。  僕だって騙されて。君を守るためなんだ。  しかし、たとえどんな言い訳をしましょうが、僕が他の男に抱かれているという事実は取り消せないのです。  僕の口は、何も語ることがありませんでした。  土塔は顔を歪めて、走り去りました。  知られてしまった。  僕を見つめる瞳は、見たことのない色をしていました。  唯一慕ってくれた後輩に、失望されてしまったのです。  これは、罰なのでしょうか。  清らかではない僕の、嘘つきな僕への。
いいね
笑った
萌えた
切ない
エロい
尊い

ともだちとシェアしよう!