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* それから数日間かけてようやく彼の死を受け入れた沙弥華は、施設を出た日から未開封のままだった彼から受け取った封筒を開けた。 そして中に入っていた数十枚の紙幣を取り出し、その一枚一枚を丁寧に千切って食べはじめた。 沙弥華にとっては彼の唯一の遺品であったそれを、沙弥華は本能的に自らの体内におさめずにはいられなかったのだ。 それが例え金属や石でも、他の何であったとしても、恐らく結果は同じだっただろう。 紙幣の半分ほどまでを泣きながら咀嚼しきった時、紙幣の隙間から白い紙切れがはらりと沙弥華の足元に落ちた。 二つに折られたその紙を拾い上げて開いてみると、そこには沙弥華が初めて見る彼の手書きの文字が綴られていた。 手紙を読み終えた直後、沙弥華は徐にキッチンへと向かい、残りの紙幣とその手紙をガスコンロの火で燃やした。 その後トイレに向かった沙弥華は、ただの紙片と化した胃袋の中身を喉に指を突っ込んで無理やり吐き出し、水に流した。 もしも部屋に灯油があったなら、間違いなくこのマンションの一室ごと燃やし尽くしていただろうーー全ての作業を終えた時、沙弥華はそんな事を考えていた。 畦道の曼珠沙華が散り、沙弥華が一人になってから何度目かの秋がおとずれ、沙弥華が犯した無数の罪に罪がまたひとつ重なった。 深く暗い過去の闇に囚われた幼い日の沙弥華の小さな足は、未だに縺れたままで暗闇を彷徨い続けている。 沙弥華自身、はじめから気付いていたのかも知れない。 彼が沙弥華を受け入れていたのは、彼自身の懺悔の為であった事に。 彼もまた、自ら犯した罪を償う為に沙弥華が与える苦痛に耐え続けてきたのだとーー。 〝僕が助けてやれなかった息子の分も、どうか幸せになってください〟
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