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第3話 花が開くかどうかはこれから次第

 少しずつ近づいていけば数センチ、あと数ミリというところでクッションを顔に押しつけられる。目いっぱい押しつけられたそれを避けると、その下で光喜が顔を真っ赤にしていた。 「ばーか、冗談に決まってんだろ」 「し、心臓に悪い冗談」 「なんだよキスくらい。いままで何回もしてきたんだろ?」 「いきなりマジな目で迫られたらびびるって」  っていうか、そんなうぶな反応されるほうがびびるっての。人には平気でキスかましてきたくせに。しかしいままで女の子しか相手してないわけだから、迫ることがあっても迫られるのに慣れてないんだな。光喜にも可愛いところがあったわけだ。 「笠原さん」 「ん?」 「心臓に悪いことはやめてください」  ふいに後ろに気配を感じて振り返ると顔を真っ青にした冬悟が立っていた。その顔に目を瞬かせれば、腕を伸ばされて抱き込まれる。ちょっときついくらいにぎゅうぎゅう抱きつかれて息が詰まった。 「もしかして、冬悟さんも本気だと思ったの?」 「冗談だとわかっていても、かなりきついです」 「……ああ、ごめん。ちょっとからかおうと思っただけだから。ごめんな」  なだめるように背中を撫でてやったら、ほんの少しだけ腕の力が緩む。それでも俺を抱きしめて離さない冬悟はすり寄るように頬を寄せて鼻をぐずつかせた。  光喜の感情が離れて行っているのは冬悟も感じているようだが、いつまでもこの三角関係が続くのは落ち着かないよな。そろそろ本格的に光喜には卒業してもらわないと。 「んー、そのためにも」  置物のように固まっている小津に頑張ってもらいたいのだが。こんな調子で大丈夫かな? 冬悟と違ってあんまり押しが強くないんだよな。 「とりあえず腹ごしらえしたら桜を見に行こう」  機会は作ってやらなきゃ駄目か。酒を飲んで勢いついたらちょっとは積極的になるかな? 歳は離れてるけど性格も良くて優しいし、なかなかの優良物件だからかなりいいと思うんだよな。 「まずは興味持たせないとな」 「笠原さん、あの二人を本当にくっつけるつもりですか?」 「うん、初心者にはいい相手だと思う。強引さがないからペースを合わせてくれるし、ここまで人柄がいい人もそういないだろ」 「でも男の人で大丈夫なんでしょうか」 「うーん、そこはまだわかんないけど」  耳元でこっそりと話す冬悟はどこか心配げな様子。確かにいくら俺がいいと言ってアピールしてきたとは言え、感情だけだからそういう意識持ってるかと言うと怪しいよな。  俺がキスしようとしただけであの反応だろう? 押し倒されたら男はやっぱり無理、とかなる可能性がある。  それに小津はタチだけど、光喜がネコをするとは限らない。んー、そういう相性もあるな。 「ねぇ、なに二人でこそこそしてんの?」 「なんでもない。飯だ、飯にしよう」  とりあえずなるようにしかならない。小津に頑張ってもらって、どうしても駄目なら諦めてもらおう。光喜が嫌なら無理矢理くっつけるわけにはいかない。元々ノンケだからうまく行くとは限らないと前置きもしているしな。
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