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第4話

 広場から少し離れたところには馬が何頭も繋がれている厩舎があり、男は迷いのない足取りで一際体躯の良い黒馬へと近づいた。のんびりと草を食んでいた馬は主が戻ってきたことに気づくと顔を持ち上げ、耳を動かす。  無言のまま馬の背に荷物同然に乗せられた蓮だったが、男は馬には驚くほど優し気な眼差しで首のあたりを軽く叩くのが必死で持ち上げた視界に映る。 (やっぱり踏んづけちゃったのすごい怒っているのかな。俺、ノーパンのまんまで立派な服の上に落ちちゃったしな……)  同じことをされたら、普段怒ることのない蓮でもさすがに怒りたくなるかもしれない。男は蓮に声をかけることなく、また、駆けだした馬のスピードは素晴らしく、荷物扱いするにしてももう少しちゃんとロープでくくるとかするもんじゃないのか? と思いながらも必死に鞍にしがみつく。  必死でしがみつきながらも、通り過ぎていく街の光景はやはり蓮が知る日本のものとは大きく異なっていた。大きなビルやコンビニエンスストアが1軒もない代わりに、西欧風といえばいいのだろうか、レンガ造りの小さな家々が連なっていたり、通りを挟んでこれは金持ちの屋敷だな、と分かる立派な屋敷があったりして、ちょっとした観光気分を味わえた。寝ているうちにどこかの国の広場の泉に放り込まれてしまったのだろうか。 (この人もお屋敷派の人ってことかあ。確かに身なりは立派そうだけど)  金持ちな上に容姿に恵まれるのはうらやましい限り。へらっと笑った蓮だったが、彼が笑っていられるのも馬から引きずり降ろされ、男の寝室らしい部屋へと連れていかれて思いっきり柔らかな寝台に突き飛ばされるまでだった。  蓮の薄い胸元で必死に耐えた花がぽいと机の上に放り投げられ、思わず蓮は「ああ……」と声を出してしまった。不機嫌顔の男は蓮が着せられていた上着を取り払うと、中に着ていた服のボタンに手をかけられたが押しのけようとしてボタンが外れてどこかにいってしまった。  どうしてこんなことをされるのか理解ができない。思わず腕の力を使って枕側にずり上がろうとしたが、足首を掴まれて無理やり引き戻された。 「おい、さすがにこれは酷いだろう?!」  折角怒りのマダムが貸してくれた服なのに。こんな傷がついてしまった服を怒りのマダムに見せたら、己は生きていられるのだろうかと蓮は震え上がる。抗議のつもりで男を睨んだが、不機嫌な男はそんな蓮の睨みなどもろともせずに裾の長いスカートをたくし上げて……恐らく、絶句した。 『***、********!?』  お前、男だったのか? と言わんばかりに蓮のそこを凝視している。さすがに恥ずかしくて手のひらで隠した。……が、蓮の平坦な胸や、さっき押しつぶした時にノーパンだったのだから気づかない方がおかしいのではと思うのだが、そこはどうなのか。  苦虫をつぶしたような顔になった男は、寝台から一旦離れると小さなテーブルから何かを取ってきた。そして喰らいつくように呆然としたままの蓮の首元に口づけると、そのまま愛撫を始める。今取ってきたばかりのものは何かの液体のようで、男は片手にそれを垂らすとそのまますくみあがったままの蓮自身に触れてきた。 「……いや、さすがにちょっと……」  逃げようと足を動かすが、ぎゅ、と大事な部分を握られそうになって途端に連の動きは鈍る。怒りのマダムからお借りしたスカートは巻きスカートのようになっていて、留め具を外されてしまうと、蓮の腰に引っかかっているただの布切れと成り果てた。  それにしても、こんなに容姿が良いのにどうして蓮なんかを相手にしようとするのか。  そんな冷静なことを考えられていられたのも乳首と大事なところを同時に責められるまでだった。 「や、それは……弱い……んっ」  自分でも驚くくらい甘い声が鼻から抜けるように出てしまって蓮の顔が赤くなった。態度は最悪なのに、愛撫する手つきや唇は優しいのもかえって辛い。すぐに追い詰められそうになったところで、大事なところは男の指からあっさりと解放されてしまい――今度はあらぬところに液体が塗り込まれ始め、蓮の大事なところは衝撃でまたすくみあがってしまった。 「ひゃっ、ホントそれは無理だから!! ……あっ」  ぬるぬるとする感触に耐え切れず男を見上げても、止めてくれる気配はない。今までずっと避けていただろうはずなのに――男の顔が近づき、蓮の唇に男の口元が触れたかと思うとそのまま舌が入り込んできて蓮の歯列をなぞる。  何とも言えない感触に悶えていると優しく髪を触られてじれったくなり、睨みつけようと相手の顔を見上げると――綺麗な、深い蒼の瞳の持ち主であることに気づく。  まじまじと見ると陽一には似ていない。似ているのは不機嫌そうな雰囲気くらいだったかも、と蓮は全力で現実逃避しようとしたが、力が抜けた瞬間にぬるりと入ってきたものに全身に鳥肌が立った。  それなのに、液体には何か含まれていたのかと思い込みたくなるくらい、男に執拗に弄られている後孔からの変な感触が少しずつ泣きたくなるような快楽に変わっていく。恥ずかしい声を必死で我慢しようとしたものの、止められず微かに喘いでしまったのを契機に、蓮は自分の深いところまで男の侵入を許してしまう羽目になった。  熱く硬いものに貫かれた時はさすがに男らしい絶叫が出てしまったが丁寧に慣らされてしまったせいで(あれ、意外と気持ちいい……)と思ってしまったのは内緒にしよう、と蓮はかたく心の中で誓ったのだった。

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