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未来

オレに生む権利なんて、親になる権利なんてあるのか。 部屋で一人になるとそんなことばかり考える。 あのバカとくだらない話してる方がまだ楽でいられたな。 気が紛れた。 なんやかんやと時間は過ぎる。 あいつはどうするつもりなんだ? あいつばかりじゃない。 オレも、どうしたい? 堕胎という行為を調べてゾッとした。 そのやり方が、とても酷で。 命が潰される様。存在していた形が消される様。 衝撃だった。 オレは、これをしようとしていた。 それもショックで………。 生まれた命に何の罪もないのに。 生まれる前に消されてしまう。 オレみたいに何とも思わない妊娠中の人間もいるだろう。 でも、オレみたいに何かが変わってきて辛く思う人間もいるだろう。 やむなく、そうせざるを得なかった泣き崩れる人間も、親たちもいるだろう。 自分だってこんなに小さい命だった。 もしかしたら生まれることすらなかったかもしれない。 受精して成形を経て生まれて愛されて……。 そんな順調に命を全うできるのは奇跡なんだ。 当たり前のことじゃない。 受精しない確率の方が高い。 堕胎、流産、五体不満足、形成不備、難病……、なんてこともある。 無事問題なく生まれても愛されない、過酷な環境なんてものが待ち受けている可能性もある。 一つの命が育ち一つの生を遂げられる事はとても小さくて、とても大きい。 「生まれたいよな……?愛されて、大事にされたいよな?」 確かに膨らむそこを撫でて静かに語りかけた。 胎動を感じ取れるのはいつだろう。 どんな泣き声で生まれてくるだろう。 どっちに似た子に育ってくれるだろう。 知らず涙が流れた。 嗚咽も出ないのに、一粒二粒流れていく。 腹を擦る手の甲にポタポタ落ちた。 何の涙かわからない。 でも、苦しい。何かに胸が潰されるようなかきむしられているような。 未来を思った。 子供のいる人生。伴侶のいる人生。家庭を持つ人生。 自分の時間も情も注ぎ込んで守っていくもの。 子供の成長。それを一緒に見守ってくれる、共に添い遂げる人。人の温かさ溢れる家。 それは、イメージするとどうしても神谷の家が舞台になる。 兄弟たちに囲まれて、無条件に愛情を与えられて…………。 それを幸せでなくなんと呼ぶだろう。 オレはきっと溺れるくらい幸せに浸れる。 そんな中で子供を生み育てていける。 それは、 「お前がデキてくれたから、得られるものなんだよな……」 小さな存在がくれるはずの未来を、オレには守る義務があるんじゃないか。 今までの考えを許してくれるなら、守っていきたい。

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