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第2話

街から少し離れたところにある、大型ディスカウントショップは若者から家族連れから、いろんな世代が入り混じって賑わっている。 その中でも特にこの店が目玉としているのが、最近このあたりでも普及し大人気となっているロボットの中古品販売だ。ほかのディスカウントショップと違い、それなりに知識のある店員が販売に必要な項目をチェックし、分かりやすい紹介とともに売り出されている。 一家に一台から一人に一台の時代へ――まるで過去に通信媒体が飛躍的に普及したように、今の時代、家庭用ロボットを持つことは当たり前となりつつあった。とりわけヒューマノイド型が人気を博している。家事能力に優れていたり子守が得意なタイプがいたりなど、いろんな分野に特化させたものからコミュニケーションロボットを進化させたようなものまで、いろんな形状、いろんな性能のものが並ぶようになったのだ。 「ひかりー、そろそろ決まったか?」  男に声をかけられて、眼鏡をかけた青年が慌てて顔を上げた。ひかりと呼ばれた青年は慌てて自分を呼んだ男のところに駆け寄ったが、どれを選べばよいのか決めあぐねていることを告げると男は呆れたように嘆息した。 「お前さ、一人暮らししているんだったら家事性能が高いやつにしたら? それか安めのコミュニケーションとかさ。お前もちゃんと給料もらっているんだから、新品にすればいいのに……」   青年――ひかりの家にはまだロボットはいない。そもそも機械音痴のひかりには不要のものだと思っていたのだが、同じ会社に勤める同僚の一人で、自称ロボットマニアの男がロボットの素晴らしさについて力説するものだからちょっとだけ興味がわいた。しかし新品で性能が良いロボットは下手すると高級車が買えるくらいはするので、ひかりは最初から中古屋で買おうと思っていた。自称ロボットマニアも折角だからとついてきてはくれたが、いざいろんなロボットを目の前にするとどれが良いのか分からなくなる。ロボット同士にも相性みたいなものがあるらしく、何台も何台も家に置けるかというと難しいのでつい悩んでしまう一因になっている。 「お、この猫タイプとかどうだ? 可愛いなあ」 「猫は好きだけど、お世話が必要みたいだね。ロボットでもちゃんと責任持たなきゃいけないから、お世話ができないのが分かっているのは無理かな」  AIが標準装備されていることがほとんどで、本物の動物のような生態を学習している動物ロボットは特に子どもに人気ではあるが、たとえば犬型なら散歩をしないと気性が荒くなる、など割と精巧に作られているので油断はできない。 「……こっちはジャンク品?」  同僚は市場価格とそれほど変わらない、目玉商品である最新型タイプの新古品に他の客たちと一緒に群がり、店員からの説明を受けているのを横目に見ながらいろんな形のロボットたちを眺め歩いたが、ふと誰もいないスペースに気づいた。何かしら欠陥や欠品があるものばかりを並べたジャンク品のコーナーだ。時々ロボットコーナーの方からテスト動作をさせて人々が驚いたり、笑いさざめく声が起こるが、同じ店内だというのにここだけは静まり返っている。同僚はまだ先ほどの最新型を熱心に見ていて、もうひかりのことは忘れているようだ。それを確認してからジャンク品コーナーを眺めていると、一体だけ人間が座っているのかと思うくらいに精巧なヒューマノイド型のロボットが置かれていた。

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