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第9話

「別に家に帰ってからでも、洗い流せば平気なのだが」 「俺が心配なの! 家に帰るまであと2時間近くはかかるよ。やっぱり海水って良くないと思う。人間だって海から上がったらすぐにシャワー使うんだから」  服を調達し終えたところで、アロハシャツから着替えさせたいのもあって休憩時間を提供しているファッションホテルへと入った。  恋人同士が利用するイメージはあるものの、フロントで鍵を借りる必要もないシステムなのを堂々とうたっているのもあり、日帰り入浴施設も近場になさそうだったので勢いだけで部屋まで入ったところまでは良かったものの、アラキにシャワー使わせている間に暇を持て余してつけたテレビを見てひかりは赤面しながら硬直した。  家庭の事情が事情なこともあって、まともに彼女を作ることもできずに一人暮らしに至ってしまったひかりには出会いなどなく、そういった知識は人並みには持っているつもりではあるものの、不意打ちでAVが流れ出してしまったのを止めることもできず凝視してしまう。  特に凝った内容でもないのだが高い喘ぎ声をあげながら女性が後ろから男性に貫かれている映像を、消そうとする指に力が入らない。 「ひかり?」  シャワーを使い終わったらしいアラキに後ろから声をかけられて、大きなベッドの上で飛び上がりながらひかりは慌ててテレビを消した。 「ちがっ、これは……テレビつけたらっ」 「男性も女性も性的欲求はあると学んでいる。別にそんな驚くことでは……」  見事な上体を晒しているアラキがベッドへと近づいて来て、思わずひかりは視線を逸らした……が、ベッドに乗り上がったアラキが無遠慮にひかりの下穿きの中で屹立してしまったそれに触れてきて、ひかりは大きく体を震わせた。 「これは男性器が生理的に勃起している現象か」 「真面目な顔で、そんなこと言わないでよ……」  あまりの恥ずかしさに、まともに顔を上げることもできず顔を赤くしていたひかりに何を思ったのか、アラキはそのままひかりが履いていたものを脱がせてしまい緩くひかりのものを扱き始めた。 「あっ、アラキさんはセクサロイドじゃない……んだよね?!」 「違うが、ひかりが辛そうだから。気持ち良くないならやめるが」  本当にセックスを専門とするロボット、セクサロイドじゃないのかと疑いたくなるくらいに的確な指遣いにあっさりとひかりは音を上げた。微かに喘ぐような声を出して白い白濁をアラキの手の中に吐き出すと一瞬で我に返る。 「ごめん、せっかくシャワーを浴びてきたのに……」  自分が放ったもので汚れてしまったアラキの手を拭おうとしたその時。唇に当てられた、少し冷たいけれど柔らかな感触にひかりは目を瞬かせた。すぐに離れていったそれはアラキの唇だった。 「……ヒューマノイドもキスとかするんだ」 「ひかりが仕事中に得た知識によると、今はこれが的確な行動だと思われた」  真面目な顔でそう言い切ったアラキにひかりは堪えきれず、赤い顔のまま笑った。 

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