1004 / 1230

本気…side零士

 ━━━━長かった。  一週間、気が遠くなる長さだった。明日の早朝、賭けの期間は終わる。今夜をやり過ごせば、俺の勝ち。  ウキウキして、ライ□を開く。 〈今夜は外食じゃなくて、レキのオムライスが食べたいな。 今日は俺の方が遅いかも。 家で待っててくれる? 後で買い物して帰るよ〉  多分、今夜は絶対にうちに来るだろう。  抑制剤を一錠足して、万全の態勢で挑む。三錠飲むと、頭痛が起きるけど、フェロモンの影響も相当受けづらくなる。  この一週間、レキはたくさん誘ったり甘えたりしてくれた。作戦って分かってても、その一生懸命な姿に何度クラッときたことか。ここまできたら、絶対に負けない。今までの努力を無駄にするな。  玄関の前で深呼吸。  油断するなよ。レキは多分、最後の手段に出てくるはず。どんな攻撃がくるか、分からないし、一瞬も隙を見せないようにしないと。  玄関の扉を開けるとレキが玄関に来た。  やっぱり、来てたんだ。分かっていても嬉しい。  顔を上げてドキッとする。  ━━俺の最近、よく着てるお気に入りのTシャツにエプロン。下は履いてないし……  ゴクリと自分の息を飲む。  恥ずかしいのか、レキはTシャツの裾を少し引っ張ってる。  …………可愛い。いきなり、負けそう。  その格好は卑怯だぞ。レキ。  エプロンはレキが料理をするようになってから、買ったもの。普段は勧めても滅多にしてくれないやつ。  男がエプロン好きなのには理由がある。俺は自分の家でエプロンをしてると、同棲とか結婚をしてるような錯覚に落ちる。自分だけの為に食事を作ってくれるというなんとも言えない幸福感と自分のものになったような倒錯的な雰囲気。  しかも、彼シャツときた。敵は手練(てだれ)。レキは俺のツボを心得てる。細心の注意を払う必要がある。  でも……  キュンとしてニヤけそう。 「お帰り」  恥ずかしそうに笑うレキの可愛さと言ったら……!なんとも形容しがたい。 「…………ただいま」  これ、一晩、耐えられるか?いやいや、ここまで努力してきた理由を思い出せ。  幸いなことにレキは弁護士バッジに興味津々。バッジのウンチクを少し話してると雰囲気が変わった。  レキは肩が細いから、少し動くとエプロンのヒモが落ちてる。ただそれだけなのに、なんだかソワソワしてしまう。 「俺以外の人と二人きりにならないでね」  大学でもモテるんじゃないかと探りを入れつつ、ドサクサに紛れて、クギを刺しとく。  そう言いながら、肩から落ちたエプロンのヒモを直した。 「卵焼いたら、すぐオムライス、食べれるよ。 今日は具沢山にしたし、トマトソースの味が上手くいったんだ」  レキが俺の腕に触れてきた。  …………いけない。顔が緩む。リビングに連れていかれ、嬉しくて笑ってしまいそうなのをグッと堪える。 「引っ張るなよ。レキ」  賭けが始まってから、レキから俺に触れることが増えた。  でも、俺も自分の気持を証明したい。  ━━━━お前に本気だって。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!